稲葉監督の戦術構想に対する疑問はそれだけではない。
「例えば就任以来『スピード&パワー』を唱えてきましたが、スピードスターと言えるのは西武の源田壮亮(28)くらい。『3割30本30盗塁』のヤクルト山田哲人(29)や、ソフトバンクの柳田悠岐(32)がいるとはいえ、柳田は左膝に爆弾を抱え、古傷の右脇腹を心配する身ですからね。短期決戦だからこそ、ベンチにスピードスターを置いておきたかった」(スポーツ専門誌編集者)
現場の報道陣からは「キャプテン不在」だけでなく、4番やリリーフエースを指名しない異例のスタイルを心配する声も出ている。
「稲葉監督は『(責任を)1人に背負わせたくない』の一点張りです。実際は選手の中で唯一、五輪を知るマー君が、09年WBCのイチローのように率先してムードメーカーを務めている。報道陣に『荷物運びもやりますよ』と笑顔を見せていましたが、何も決めず、明言しないやり方に不安いっぱいですね。選手たちも表向きは『どこでも投げます』『やれることを最大限に』なんて言っていますけど、一部の選手からは『(起用法は)何も決まってないッス』と、ボヤキが聞こえてくる」(スポーツ紙記者)
確かに稲葉監督は、7月8日に収録された毎日新聞のインタビューで「(打順は)基本的には日替わり」「抑えを決めずに、という考えも変わらない」と応じていた。
ただ、日本で活躍する選手が代表入りしている各国の印象を聞かれると「日本の情報が流れて丸裸にされるのかなと感じる。米国やメキシコは投手が12人。1イニングずつ、どんどん投手を代える戦い方をしてくるのでは」と警戒を露わにしている。
スポーツ紙記者は、
「抑えの松井を招集できなくなったあたりから、稲葉監督の言葉に変化が出始めた」
として、こう続ける。
「戦略について聞くとソフトな口調ですが、宿敵・韓国に話が及ぶと、とたんに言葉選びがオロオロという感じ。初戦で当たるドミニカの先発は、今期6戦で5勝をあげている巨人のメルセデス(27)で、いきなり敗戦の危機すらあった。『(敗者復活回りになっても)最後に金メダルを獲れれば‥‥』などと、少し弱気な発言が指揮官から出る以上、実はすでに『敗戦原稿』の準備もしています」
これまで3度の五輪優勝を誇るキューバが不在となれば、激戦必至。稲葉ジャパンがどういう戦いを見せるのか、注目したい。
*「週刊アサヒ芸能」8月5日号より