さらなる少子化を見据え「現役世代の負担を年700億〜800億円程度軽減できる」として、高齢者の窓口医療費負担を2倍にする法案が11日、衆院本会議で可決された。
これにより、75歳以上の後期高齢者は、単身世帯で年金を含む年収が200万円以上(夫婦2人なら320万円以上)という条件を満たす場合、2022年度後半から負担割合が現在の1割から2割に引き上げることが決定した。
政治ジャーナリストが語る。
「75歳以上の医療費は21年度予算で約18兆円。高齢者本人の窓口負担を除く約16・6兆円のうち、約半分は税金で、うち4割は現役世代の保険料で賄われている現状です。そこで、政府・与党は昨年末に高齢者の2割負担導入を決定。ただ、窓口での負担が増えれば家計が厳しい高齢者の『受診控え』に繋がり、重症化する心配もある、として野党が大反対していました。そこで、7日午後の野党議員の質問が終わると自民党が採決を提案して、議事を進める渡嘉敷奈緒美・衆院厚労委員長を野党議員数人が取り囲み、『ダメだ!』と叫んだものの、結果採決は続行。この強引なやり方に一部野党議員からは『コロナにかこつけた火事場泥棒だ!』といった声も上がっていました」
高齢者の負担割合が2割に引き上げられれば、たしかに、現役世代の負担が年間720億円ほど軽減されるという試算はある。
「ただ、これを一人当たりで計算すると年間700円、1日当たりにして2円程度なんです。一方で国や自治体の公費は相変わらず930億円もある。つまり、こちらを削減すればことが足りる話なんです。そもそも、緊急事態宣言下の厚生労働委員会で、なぜコロナ対策ではなく、年収200万円のギリギリの生活を余儀なくされている高齢者の医療費負担を2倍にしようという法案が審議されなければならないのかが、甚だ疑問。しかも、それがどさくさに紛れて強行採決されてしまうんですからね。これでは、現役世代の負担減という大義名分を掲げて、高齢者から金をむしり取ろうとしていると思われても仕方がない。結局、また年金生活をする高齢者が泣きを見ることになりそうです」(同ジャーナリスト)
一連のニュースを受け、SNS上には、
《自分達の懐が痛まない法案は風のように通すなぁ》《減る年金に増える負担、長生きすることが地獄!の世の中が来るな》《このご時世にさらに個人負担を強いる政府ってどうなの?》と批判のコメントが相次ぎ、さらには、
《国民ばかりに負担を強いてどうするんだ?議員定数削減、歳費の削減がさきだろうが!》《まずは議員の給料やボーナスさげるべき》《高齢者の国会議員は当然10割負担でいいでしょう》といった本質をついた意見も。
国民の血税で訳の分からない「箱もの」を次々と建て、結局は不良債権化させて、その負担を国民に押し付けてきた政府。またもや、コロナ禍の損失で同じことを繰り返そうとしているのか。ともあれ、菅政権の支持率低下は防げそうにない。
(灯倫太郎)