「つがい」と信じ繁殖8年!円山動物園の珍鳥ペア、実は同性カップルだった 

 南米の熱帯雨林に生息し、色鮮やかな体色から「アマゾンの宝石」と呼ばれる珍鳥オニオオハシ。そんな珍鳥の「トト」(雄)「ポコ」(雌)のつがいを、札幌市円山動物園(札幌市中央区)が購入、飼育が始まったのが2013年のことだ。

 だが、16年以降毎年産卵を確認するものの、ふ化せず、検査した卵は全て無精卵だった。そのため、動物園では20年に巣箱内部にカメラを設置。2羽の日常を詳細に観察すると、卵の多さから雄とみられていた「トト」が産卵した可能性が浮上。北海道大学獣医学部の協力のもとDNAを調べた結果、なんと2羽とも雌であることが判明したという。

「つがい」と信じ涙ぐましい繁殖努力を続けること8年、「同性カップル」だったという皮肉な結末に担当者はガックリ、といったところだが、動物園関係者によれば「オニオオハシは外見で性別を見分けるのは難しいが、トトはくちばし、体が比較的大きく、雌の『ポコ』に対する求愛行動も見られたため性別を疑わなかった」という。

 動物の生態に詳しいジャーナリストが語る。

「動物園の説明では自然な求愛行動も見られた、ということですが、実は動物の世界では、両性愛を含め同性愛は広く見られることなんです。たとえば、ニホンザルの場合、雌同士が性的な活動を特徴とする『求愛』を行うことは少なくありませんし、雄も同年齢の複数パートナーとともに同性間の関係を持つことは不思議なことではありません。また、アフリカゾウやアジアゾウの雄も、同性間できずなを結び、マウンティングを行います。具体的な行為としてはキスしたり、鼻をからみ合わせたり、おたがいの口の中に鼻を入れるといった相互行為が一般的です。つかの間の関係である異性との関係以上に深いものもあり、言うなればそれが『仲間づきあい』ということになるのかもしれません。彼らがなぜそういった行動をとるのかは詳しくわかっていませんが、キリンなどは、交尾するつがいのうちの9割は雄同士とされてていますからね、いかに動物の世界に同性カップルが多いかが分かるはずです」

 なるほど、動物たちの求愛行動が、仲間としての絆を深めるための行為だとすれば、理解できなくもないが、とはいえ、貴重な時間を費やしてきた同動物園としては、なんとか繁殖に成功させたいという思いもあるのは当然のこと。同動物園では、「今回はこのような結果となり非常に残念ですが、両個体とも産卵することができる貴重なメスであることから、今後は国内の他園館と協力して個体交換などを行い、繁殖に取り組んで参ります」とコメントしているが、報道に対しSNS上では、

《繁殖の為だけに雄と入れ換えるのはちょっと違うような気が……。仲良しのペアがいなくなり、全然知らない雄が来たって幸せとは限らないのでは》《入れ替えるって、モノじゃないんだからさ。ストレスがかかってどちらかが弱るかも。繁殖させたいのであれば、別のペアを連れてくるとかがいいよ》《同性婚はダメですか?》といった意見が続々。

 動物の世界にも人間同様、やがてジェンダーレスが尊重される時代がやってくるかも?

(灯倫太郎)

*写真はオニオオハシ

ライフ