「今シーズンが契約最終年になりますが、仮にあと1、2年延長したとしても、全権指揮官を担うこの第3次政権で身を引くことになるでしょう」(球界関係者)
原辰徳監督(62)には、監督退任後のビジョンがあるようだ。その答えは近年、突飛とも思える原流の仕掛けに隠されていた。球界全体を意識する言動や提案を繰り返している背景に、意図が透けて見えてくるのだ。
「原監督は19年、20年と日本シリーズでソフトバンクに辛酸を舐めさせられた直後、セ・リーグへのDH制導入を強く訴え続けています。12年の巨人を最後に、現在までパに日本一を明け渡し続けている。パとのレベル差を埋めるため、DH制導入は悲願です。19年の秋季キャンプでは、FA制度における人的補償について、制度活性化の妨げになっている可能性を主張し、撤廃か、または現行28人のプロテクト枠の拡大などの持論も展開しました。結局、全てセンセーショナルに報じられたわりには、他球団の同意を得られずにスルーされ、本人としても忸怩たる思いがあるようです」(巨人番記者)
自身の思い描く「球界革命」が遅々として進まない。であれば、動かす立場に上り詰めれば話は早くなる。
「ズバリ言いますが、原監督が視野に入れているのは、NPB(日本野球機構)コミッショナーの座です。コミッショナーに就任して自身が主導する形で改革を訴えていけば、メスは当然入れやすくなります」(球団関係者)
そんな「究極野望」は、原監督が野球人として尊敬している故人の遺志を継ぐことにもなるという。
「生前にコミッショナー就任を夢見ていた、星野仙一氏です。原監督が現役時代から星野氏を尊敬していたのは有名な話で、現役引退後に系列の日本テレビではなく、星野氏と関係が深いNHKの解説者になっているほど。03年に『読売グループ内の人事異動』という屈辱的な原監督の辞任劇が繰り広げられると、敵将だった阪神の星野監督が甲子園で退任セレモニーを実現させてくれた。花束を贈られ、激励の言葉を投げかけられた原監督は、目を赤く腫らしていました」(巨人番記者)
セ・パ両リーグで優勝を成し遂げ、楽天監督として他ならぬ原巨人を倒して日本一を果たした星野氏にとって、さらなる高みはコミッショナー就任しかなかった。原監督にしても、そのコースは同じだ。
「原監督は昨シーズン中、監督として通算勝利が長嶋茂雄監督はおろか、川上哲治氏も抜き去り、巨人軍で歴代1位となりました。リーグ優勝9回、日本一3回、そして侍ジャパンの監督としても09年の第2回WBCで連覇に貢献している。同年に日米のプロ野球界からは初の世界最優秀監督に選ばれ、正力松太郎賞も3度受賞しています。監督としてやり残したことは、もはやソフトバンクへのリベンジのみなんです」(球団関係者)
原コミッショナーが日本球界で辣腕を振るう日が訪れるか。若大将の長き野球人生のラストロードに期待したい。
※「週刊アサヒ芸能」3月18日号より