次亜塩素酸水、うがい、抗体検査…専門家が「コロナ対策」の有効度を総点検!

 冬の到来でウイルスが活発化したのか、あるいは気持ちの緩みが招いたか─。新型コロナ「第3波」の襲撃で感染者数、重症者数はともに夏の「第2波」のピークを凌駕している。となれば「あの防衛策」はいったいどの程度、有効だったのか。キッチリと検証しておかねばなるまい。

 11月初頭から新型コロナ感染者数の拡大は続き、ついに11月19日には東京都が警戒レベルを4段階中、最大にまで引き上げた。しかし、報道される「コロナ対策」は千差万別。いったいどの程度の有効性があるのか、今ここできちんと知っておくべきだろう。

 まずは、マスク着用。「アベノマスク」に代表される布製マスク、一般的な不織布マスクのほか、さまざまな素材、デザインのものが流通。医療ジャーナリストの那須優子氏に違いを聞いた。

「布製と不織布を比較した時、自身の飛沫飛散を防ぐ点では多少の差はあれ、有効性は高い。ですが、自分がウイルスを吸い込む、つまり予防の観点から見ると、正しい使用で他人の飛沫をかなりブロックできる不織布に対し、布製は繊維の目が粗い分、大幅に効果が薄れてしまいます」

 若年層を中心に布製マスクでオシャレする人も増えたが、市販の飾り気のない使い捨てマスクのほうがウイルス対策には優秀なのだという。

 神奈川県は11月12日、会食時のマスクマナーの動画を公開。そのひとつが「飲食店では外で着けていたマスクを外し、新しいマスクに交換」だった。「マスクの表面にはウイルスが付着している可能性がある」との理由からだが、これには「飲食店に行くたびに新しいマスクに代えろというなら、行かなくてもいい」という声も。はたして、実現性はどうなのか‥‥。

 フェイスシールド、マウスシールドは、グルメや街歩き番組のタレントがマスク代わりにたびたび着用している。都内総合病院の勤務医が検証する。

「フェイスシールドは他者の咳やクシャミで飛沫が自分の顔や目に付着するのを防ぐもので、ウイルス吸い込みには無効果。自身の飛沫も、マスクに比べて漏れ出る量が多いです」

 マスクと併用して予防効果を高める点では有用なため、医療や介護の現場などで利用されることが多い。一方で、マウスシールドに関してはこの勤務医が、

「ほとんどの飛沫はせき止められず、上方に大量に漏れ出て周囲に拡散したり、衣服に付着したりします。隙間が多すぎて、出ていくほうも入ってくるほうも通行フリーの状態。感染予防にはまったく意味がありません。私がある緊急病院に助っ人に行った際、医療スタッフはマウスシールドを使用していました。『大丈夫かよ』と思っていたら案の定、その病院はコロナの院内感染を起こしてしまった。騒動後に再訪したら全員、きっちりマスク着用に変わっていました」

 なんとも笑えない話である。

 アルコール消毒や手洗いは、ごく身近な対策として浸透。一部では「消毒しても、そのあとに何かを触ることになるから、無意味だ」という意見もあるが‥‥。

 那須氏は大前提として、石けんを使った手洗いがウイルスの除菌、消毒に最も効果的で、手洗いができない場合にアルコール消毒が有効だ、と語る。

「仮に石けんでの手洗いで洗い流せるウイルスの量を『100』とした場合、目安として濃度70%以上、95%以下のエタノールでの消毒で『90』、多少混ぜ物をしたアルコールジェルなどが『70』程度のウイルス除去率ですね。手洗い後に何かに触って、手に付着しているウイルスの量が『20』になることもあるでしょう。先ほど便宜上『100』と言いましたが、実際にはウイルス付着を100%防ぎきるのは不可能。結局、私たちができることは『最小限のウイルスを、自身の免疫機能で抑え込んで発病させない』ことなんです」

 消毒用アルコールの代用品として急激に普及したのが、次亜塩素酸水だ。厚生労働省の定義によれば、次亜塩素酸水とは食塩水や塩酸を電気分解して生成されたもので、酸化作用でコロナウイルスを無害にするという。同様に消毒効果があり混同されがちな「次亜塩素酸ナトリウム水溶液」は塩素系漂白剤などの成分を原料とし、人体には有害で手指消毒などには向かないとされるが‥‥。感染症や公衆衛生を専門とする医学博士の中原英臣氏によれば、

「次亜塩素酸水は野菜を出荷する際の洗浄にも用いられ、内閣府の食品安全委員会からも安全性について評価を得ています。換気ができないような場所では、次亜塩素酸ナトリウム水溶液や引火性のあるアルコールを室内に噴霧ができないため、次亜塩素酸水を噴霧して除菌することが可能です」

 問題は、生成法が異なるため効力が違う、あるいは成分表記のあいまいな「怪しい」製品が存在したり、保存状態しだいで劣化が早まり除菌効果が薄れることだ。

「空気清浄機などに注入して室内に噴霧している飲食店などがありますが、あれは成分によっては、吸い込むとかえって健康被害が出るおそれがある。無人の部屋に噴霧し、部屋自体の消毒が終わってから人が入るのが正しいやり方です」(医療関係者)

 うがいなどの口腔ケアの必要性については、中原氏がこう答えた。

「昔からある風邪の予防方法はおおむね、コロナウイルスにも有効。当然、うがいも有効です。水より塩水やイソジンのようなうがい薬のほうがより効果的です」

 予防とは関係がなさそうな歯磨きも実はかなり有効で、

「口内の歯周病原細菌を減らすことでインフルエンザウイルスの細胞への付着を阻害できることがわかっており、同様の性質を持つコロナウイルス予防にも有効です」(歯科医)

 というわけで、1日数回の歯磨きを推奨している。

 5月末の緊急事態宣言解除以降、人の移動制限・外出自粛には感染拡大防止と経済循環の矛盾がつきまとい、その是非について評価が割れている。元大阪府知事の橋下徹氏は11月16日の「グッとラック!」(TBS系)で持論を展開した。

「政府と専門家会議は4月に出した緊急事態宣言の効果の検証をやっていないので、人の移動が感染を広げるかどうかわかっていない」

 一方で、6月に大阪府が主導した専門家会議では、大阪大学の中野貴志教授が「感染拡大の終息に、外出や休業要請による効果はなかった」と明言。政府がなんとなく国民に忖度させている現状では、橋下氏の言うように、実効性は不明のままだ。

 コロナの被害をモロに受けた飲食業界ではさまざまなコロナ対策を凝らし、営業を再開するところが増えた。

 対策の一環として、今や設置していない店のほうが珍しいテーブルの仕切り板は、理化学研究所などが集まったコロナ対策チームが次世代スーパーコンピューター「富岳」を使ってシミュレーションを行い「床から140センチ以上で対面者の飛沫量が10分の1になる」ことがわかっている。同チームはスパコンによるさまざまなコロナ対策の演算を行っているので、気になる方は一度、ネットで検索してみるといいだろう。

 最後は、抗体検査について。検査時点での感染については判別できず、過去のコロナウイルス感染履歴がわかる検査のことだ。コロナはインフルエンザのように、同型のウイルスに再感染することがないかどうかも不明なため「過去の感染歴を知って何の役に立つのか」という意見もある。那須氏は実際に抗体検査を受け、過去の感染歴が判明した経験を持つ。

「私の場合、コロナで亡くなった方と接触していたのですが、体調が悪いのにPCR検査を受けられず『自分はコロナだったんじゃないか』というモヤモヤが続いていました。抗体検査でそれがはっきりして、スッと気持ちが晴れましたね。仮に次に同じ症状で体調が悪くなった時、医師には『実は以前にかかったから、PCR検査を受けたい』という説得材料にもなります。これからの季節は、例えば故郷への帰省を考えている人が抗体検査を受けて、濃い反応が出たとします。それが無症状でも、自分が直近に、コロナウイルスに感染するような環境にいた証明になる。すなわち、他人にウイルスを運ぶ側になる可能性があるということ。『実家に帰るのはやめとこうかな』という判断もできますよね。自分がクラスター源にならないよう活用できる検査だと思います」

 正しい防衛法、感染させない対策で春を迎えたい。

ライフ