ミスター・トリプルスリー、東京ヤクルトの山田哲人内野手の去就問題に関する新情報が飛び込んできた。今季、体調不良などもあって、打撃成績を大きく落としてしまった。「コロナ禍でどの球団も経営が苦しい。来季、好成績を残して…」とFA権行使の見送り説も聞かれたが、山田に興味を持つ他球団がもっとも懸念しているのは「盗塁数の激減」。昨季は打率こそ落としたが、盗塁はトリプルスリーを獲得した2018年と同じ「33」をマークした。今季は試合数も減ったが、山田は盗塁を「8」しか決めていないのだ。
「調整で二軍落ちしていた期間もあり、盗塁数の激減がそのまま脚力の衰えを示しているわけではありませんが…」(球界関係者)
89試合を終了した時点で、山田は12回の盗塁を試みて、失敗は4。昨季、38連続盗塁成功の日本新記録を樹立しているだけに、失敗の多さが目立つ。ヤクルトの関係者は「走るスピードは絶対に落ちていない」とかばうが、失敗が増えた原因は解決しなければ、たとえ21年に好成績を残して仕切り直したとしても、自身を高く売り込むことはできないだろう。そんな山田の盗塁失敗増に「新説」が囁かれている。「青木宣親、村上宗隆よりもバレンティン」という理論だ。
「山田が出塁した際に打席に立って、盗塁をフォローしていたと言われるのがバレンティン。ボールを叩いた後のフォロースルーも大きく、それこそ、相手捕手の頭をバットで叩いてしまいそうなくらいでした。そのため、セ5球団の捕手はヤクルト戦のとき、通常よりも少し後ろに下がって構えていたのです」(在京球団スタッフ)
昨年オフ、バレンティンはソフトバンクに移籍してしまった。
そのフォロースルーの大きさで震え上がらせていた大砲がいなくなり、相手捕手は通常のポジションに戻ることができた。しかも、相手捕手はしっかりと前に踏み出して二塁送球ができるようになり、それが山田の盗塁阻止にもつながったという。
「もともと、山田は相手バッテリーの配球ではなく、投手のクセを覚えて盗塁を仕掛けてきました」(前出・在京球団スタッフ)
往年の盗塁王たちは投手のクセだけではなく、相手捕手の配球も考え、変化球を投じるときを狙って走っていた。
山田は50mを5秒67で走り抜ける俊足だ。トップスピードに入るのも早い。しかし、「快足=盗塁成功」とはならないのが野球であって、相手チームも味方投手のクセを見破られたのを逆手にとっているのかもしれない。盗塁技術のさらなる精度アップが求められている。いっそ、バレンティンを呼び戻すか? 移籍したあとの居心地の悪さを語ってもらえば、残留の説得にもつながりそうだ。
(スポーツライター・飯山満)