連日200人以上というコロナ新規感染者数が発表され、全国から後ろ指を指される東京。政府の「GoToキャンペーン」でも対象外となったが、中でも白い目で見られているのが新宿・歌舞伎町のネオン街だ。そのど真ん中、旧コマ劇場付近で営業する居酒屋店主が語る。
「4月に休業要請された1日の売り上げは2万円足らずだったよ。家賃が月130万円だから焼け石に水どころじゃないのはわかるだろ。本来は、7月になったら東京五輪の外国人客でにぎわうはずだったけど、小池都知事が歌舞伎町の夜の街を『主犯格』扱いするから、まだ客は6~7割しか戻ってこないんだ。もうお先真っ暗だね」
20年以上、歌舞伎町で働くスナックママも悲痛の声を上げる。
「今、歌舞伎町では、スナック、居酒屋、花屋、ラーメン屋など店が毎日のように潰れていってるわよ。うちも常連さんから予約が入った時しか開けられない状態なの。やっぱりコロナが怖いじゃない。それでも常連さんが心配してくれて、お米や商品券などを送ってくれるでしょ。なんとか店を続けなきゃと思うけど、この先、貯金を切り崩しても家賃の支払いを続けられるのはあと2カ月が限界ね。せっかく自粛解除になっても『あいつら』が暴れてるんじゃ、歌舞伎町に客は戻ってこないわよ」
不夜城と称された歌舞伎町の「ネオンを吹き消す元凶」と袋叩きに遭っている“あいつら”とは、従業員がクラスター感染するなど、新たな感染拡大の場となっているホストクラブだ。30代のOLが語る。
「大阪のライブハウスが感染爆発を起こした頃から、いずれホストクラブがクラスターを起こすだろうと思って、行くのを控えています。入り口で丁寧に消毒したところで、店内では部活みたいに大声を張り上げて盛り上げるスタイルでしょ。それに酔っ払って盛り上がって、他人のグラスだろうがかまわず飲み回しするわけで、うつらないわけがないわよね」
20代の常連客は、ホストが温床となる秘密をこう打ち明けた。
「まずは、ホスト特有のシャンパンタワー。女性客からの注文を大声でマイクコール。そのマイクを女性客に渡してひと言もらったあと、またそのマイクで乾杯の音頭。感染しないほうがおかしい。他にも、マドラーの使い回し、ドリンクの飲み回しとか理由はいくつもあるけど、一番の要因は『エレチュー』だよね。ホストクラブでは初めての客でも店の外まで担当が送り出すのが基本。その送りのエレベーターの中でブチュッてやるわけ。別れ間際の密室というシチュエーションで色恋営業はバッチリいくけど、コロナだって一発感染よ」
ホストの鉄板サービスが命取りになっているというのである。このシステム以外にも問題点を指摘するのは、先のクラブママだ。
「あいつら、いまだにマスクもせず町なかをウロウロしてるの。先週も店の帰り道にしつこく勧誘してきてさ。腕までつかまれたから警察に突き出してやろうかと思ったわよ。新宿区はコロナ感染者に10万円の見舞金を贈るって決めたらしいけど、逆効果でしょ。現役バリバリの健康なホストがコロナになってもどうせ軽症。せいぜい『10万円が当たった~』なんてバカツイートするのが関の山よ」
なんとも手厳しい。
歌舞伎町に精通するライターの仙頭正教氏が語る。
「閑古鳥が鳴く歌舞伎町で、順調に客が戻ってきているのが大手のホストクラブです。4月の休業宣言直後は店を閉めたものの、1週間後には営業を開始していました。とはいっても、多くはそうではない。ここ数年はホストブームで、一晩で500万~1000万円使う女性客もざらでした。でも、今回のコロナ騒動で『バブルがハジけた』と嘆いているホストもいますから」
客が入ればクラスター、入らなければバブル崩壊。いずれも茨の道が待っているのだ。歌舞伎町だけではなく、今や各地の繁華街でコロナ禍が再び広がりを見せている。
池袋のガールズバーで働く20代の女性はコロナショックを2度受けたと嘆く。
「この4月にオフィス器具会社に就職が決まったんですけど、いきなり上司から『北陸に営業して商品を売ってこい』って命じられたんです。このコロナの最中に新規の客なんてとれるわけないですよね。そんなパワハラ的な会社にはとっとと見切りをつけて、学生時代に働いていた池袋のガールズバーに戻ったんです」
コロナ離職によって舞い戻ったその店にも再びコロナ禍が襲いかかった。
「歌舞伎町がヤバイっていうんで、お客さんが池袋にドバッと流れてきたんですよ。お店が儲かるのはいいんだけど、この時期だと密になるだけでしょ。もちろんマスク着用で接客してるんだけど、お客さんは『気にしないでいいよ。マスクなんか着けなくっていいよ?』って言うんです。内心『こっちがうつりたくないんだよ?』って文句言えないから困っちゃうんだよね」(ガールズバー店員)
しかし、池袋が歌舞伎町ショックで隆盛を極めたのもほんの束の間。7月に池袋のホストクラブでもコロナ感染者が発覚した。
「クラスターが出たのは池袋北口にあるホスト店から徒歩数分のところにある雑居ビル。その一室の8畳間が、金のないホストたちが寝泊まりするタコ部屋となっていたんです。出入りのためのエレベーターが1機しかない3密ビルのため、その他の中国系の店なども従業員が検査を受けることになった」(地元飲食店店主)
コロナ感染拡大の主犯として、ホストに批判が集中するのはここでも同じこと。元ホストがその心中を代弁する。
「同じ接客業でもホストばかりを目の敵に攻撃するのは、お役人が女の店で遊べなくなるからだろ。ホストが発生源みたいに言うけど、実際にはコロナを店に持ち込んでるのは風俗嬢だよ。不特定多数の客と濃厚接触してるわけだし。それでも無症状で店に来れば、こっちだって稼ぐためには商売するしかないっしょ」
同じ夜の街でも不思議と小康状態を保っているのが大阪の夜の街のホストたちだ。
在阪社会部記者がそのワケを語る。
「4月に北新地のナイトクラブでクラスターが発生したことが報道されたが、以降はホスト店などで出たという話を聞かない。東京に比べ規模が小さいとはいえ、まったく出ないのも不思議です。ただ、東京は地方からの出稼ぎホストが多いのに対し、大阪は団結力が強い。それよりも、新地で稼げなくなった高級ホステスの一部がパパ活に移行しました。夜遊びに金を使わなくなったパパたちから一晩10万円の『給付金』をせしめているようです」
コロナ後にお嬢が増えたのはパパ活市場だったとは‥‥。
「大阪でも風俗店は、緊急事態が解除されて普通に営業しています。ただ、地方から遊びに来る客が減ったのが痛手で、まだまだ全面回復にはほど遠い状況。それでもミナミには、マスクを着けた20代の若い“商売女性”がいます。もちろん声をかける客もマスクを着用している。なんでも、交渉後にマスク美女の顔を拝む楽しみが増えたんだとか……」(性産業ライターの前田たかより氏)
風が吹けば何とやら。コロナ禍でも活況だったホスト業界といえど、主客の性産業キャストが稼げなくなれば回らなくなるのは自明の理。風評被害をあわれみつつ、夜の街がコロナ第2波の呼び水とならないことを祈るばかりである。