新型ウイルスの猛威は球界をも直撃し、二転三転した「開幕予定日」は白紙に。まったく先が見えない中、「今季はもうムリ」との観測が広がりつつある。そこで一気に噴出してくるのが、待遇や球団経営を巡る数々の「大問題」なのである。
「こんなコロナの中で、野球なんてやってる場合じゃない…」
これはさる球団の中堅選手が吐露した、苦しい胸の内である。
コロナ禍の4月3日、日本野球機構(NPB)と12球団の代表者を集めた会議で、4月24日に予定していた開幕のさらなる延期が決定。緊急事態宣言が出された今、先行きはまったく見えていない。
「実はNPBと12球団の取り決めで、開幕について一選手が意見を発信することは禁止されている。選手たちは『決まったことに従うだけ』とコメントしているけど、裏では『いつを目指して調整すればいいんだよ』とボヤく選手もいますね。自分がどうなるのか誰もわからないから不安なんですよ」(球界関係者)
NPBの本音は「100試合をメドに開催したい。せめてオールスター時期の直後あたりから、ダブルヘッダーを組み込みながら70試合とか……」と楽観的ともとれるが、現実は——。
「途中開幕というよりは、もう『中止』になる公算が大きくなってきていると思います」(球界関係者)
そんな前代未聞の事態に追い込まれれば、にわかに噴出してくるのがまず、年俸の問題だ。スポーツ紙デスクが解説する。
「今季中止なら判定材料がないため、全選手が据え置きでしょう。選手は2月1日から11月30日まで拘束される条件で給料を受け取る契約を交わしている。だから球団は、理由もなく年俸に手出しできない。7月31日が期限のトレードにしても、普通にできます。時間ができたことで、各球団は戦力を今一度、分析する。『合コン疑惑』でコロナ陽性騒動を起こした阪神・藤浪晋太郎などは『懲罰トレード』の可能性も出てくるでしょう。でもそれより問題になるのは、FA権ですよ」
すなわち、順調にいけば今オフにはFA権を得るはずのヤクルト・山田哲人、広島・田中広輔、中日・大野雄大、日本ハム・西川遥輝らの処遇である。取得条件の1軍登録日数に満たないことになるからだ。
「これには『コロナ特例』が検討されています。シーズンが開幕しなくてもまる1年、1軍登録されたものとしてカウントする。あるいは、半分の日数に換算するとか」(スポーツ紙デスク)
ところが、である。この特例によってFA権を行使できたとしても、
「試合がなければチケット収入はゼロで、どの球団も収益はガタガタ。戦力補強の資金がどれだけ確保できるか。本来の評価より安く買い叩かれるでしょう」(スポーツ紙デスク)
国内に限らず、今オフにポスティングでのメジャー移籍をもくろむ巨人・菅野智之とて、黄色信号が点滅。球界関係者は、
「メジャーも同様のコロナ禍。ヘタをすれば、(昨オフ、ブルージェイズに移籍した)山口俊より安い値がつくのでは、との声もある」
まさに青色吐息なのだ。