公安調査庁によると、ひかりの輪の信者数は約150人(19年1月時点)。14年時、出家・在家合計114名だったことを考えると、少数ながら信者を増やしている。元信者によると、オウム時代から残る信者は半数ほどだという。
「残り半数が地下鉄サリン事件後の入信ですが、たいてい3年程度でやめていく。ひかりの輪を下支えしているのはオウム時代からの古い信者たちで、つまりは麻原を信仰している一群です」(元信者)
表向きは「麻原信仰」を捨てて、巧みな弁舌でシンパを増やす。一方で、麻原元死刑囚の「一番弟子」であることを最大限に利用して元オウム信者を引きつける。上祐氏の表と裏の顔が見え隠れしている。
そんな上祐氏の裏側が露呈したことがある。18年7月の麻原元死刑囚の死刑執行直後のことだ。
「週刊新潮」(18年7月19日号)が〈「上祐史浩」がひた隠し! 警察も知らない「麻原彰晃」の女性信者殺害〉と題するスクープ記事を掲載した。
記事によれば、被害者は吉田英子さん(当時27歳)。90年頃に教団の金を横領した疑いをかけられた吉田さんは、麻原元死刑囚の指示のもと殺された。その殺害の場面に、死刑になった教団幹部とともに上祐氏がいたという内容だった。
執行前に同誌からの事実確認の取材に対して、はぐらかして答えずにいた上祐氏だったが、死刑執行の2日後、一転して「見ていただけ」と事実を認めた。アレフ時代は麻原への信仰ゆえに告白できず、アレフ脱会後は自分に危険が及ぶことを恐れて話せずにいたというのだ。
とうの昔に時効が成立し訴追を受ける可能性がないのに、死刑執行直後まで隠し通していたことに違和感を覚えた。これまで上祐氏は重大犯罪に関わりがないとされてきた。大半の関係者が死人に口なしの状態になったことで、イメージ悪化を最小限に抑える内容で告白できると踏んだのではないのか。
勘ぐりでしかないが、少なくともこれまでのオウム事件への総括や反省が、新たな殺人事件の告白で疑わしくなったのは事実だ。
「上祐が反省をアピールしているのは観察処分を外すため。処分が外れれば、麻原信仰も含めてやりたい放題でしょう」(元信者)
ひかりの輪は、観察処分を不当として取り消しを求める訴訟を複数起こしている。うち1件で3月11日、最高裁が上告を退け、教団の敗訴が確定している。
藤倉善郎(ジャーナリスト)