オウム真理教の今「地下鉄サリン事件から25年」(3)唯一の会える正大師

 この元信者は、ひかりの輪の成立をこう証言する。

「アレフ内で上祐派が形成された時、麻原はすでに獄中で遅かれ早かれ死刑になることは確実でした。上祐本人や上祐派の面々は『今生ではグル(麻原)ともう会うことはできない。しかし、上祐はグルと輪廻をともにする者である。上祐とともにいれば来世でグルと出会える』といった趣旨の言葉で、主流派の信者たちを引き入れた。これが、のちにひかりの輪になりました。上祐は信者たちに麻原の説法ビデオなどの教材を破棄させましたが、オウム時代からの信者は内心では麻原を信仰しているし、在家の中にはこっそりと麻原の教材を隠し持っている信者もいると思います」

 ひかりの輪本部内には、弥勒菩薩像のポスターやチベット仏教のタンカ(仏画)が飾られている。弥勒菩薩はサンスクリット語で「マイトレーヤ」である。オウム時代に麻原元死刑囚が上祐氏に授けたホーリーネームだ。現在、上祐氏が名乗ることはないが、こうして暗にオウム時代の自身のステージをほのめかす。

「麻原が説いた修行を追求したい信者はアレフに残りますが、一方で、麻原を尊敬するからこそ、上祐に教えを請いたいと考える者もいます。オウム残党の各団体の中で、麻原から授かったステージは上祐が最高位(正大師)だからです。アレフに関わっている麻原の妻も正大師、長男・次男は最終解脱者ですが、一般の信者が会うことは基本的にできない。それができるのは上祐だけです」(元信者)

 唯一の「会いに行ける正大師」という立場を実感させるのが、例年12月に本部内で催される上祐氏の誕生会。プレゼントを持参した者は、別室で上祐氏と2人きりで「謁見」できる特典がついているのだ。

「オウム時代、10万円以上のお布施をしなければ、上祐は面談してくれませんでした。それが今は簡単に会える。そのため、信者ではない『上祐ファン』も出入りするようになっています」(元信者)

 そこで私は15年の誕生会に、サンタクロースのコスプレ姿で白い袋に入れたプレゼントを持参して本部に潜入した。もちろん「謁見」に成功。その際に、袋ごと上祐氏にプレゼントを手渡した。上祐氏が袋から取り出したのは「幸福の科学」の教祖である大川隆法総裁の写真が入った額縁。ブラックジョークのつもりだったが、

「これは! 昔、幸福の科学が信者に100万円で売っていたものですね! ありがとうございます!」

 思いのほか、上祐氏は喜んでいた。それもそのはず、ひかりの輪は後日、この額縁を10万円でヤフオクに出品したのだ。これは余談だが、最終的に入札ゼロで買い手がつかないまま出品を取り下げている。

藤倉善郎(ジャーナリスト)

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