厚労省は1月28日に日本人で初の新型コロナウイルスの感染者が確認されたことを公表、しばらくは世界レベルで感染の拡大に戦々恐々としなければならない状況だ。
「タイミングも最悪でしたね。先週25日には中国で春節(旧正月)に突入、人々が帰省や旅行などの大型移動する時期と重なり、その計画は混乱に陥りました。旅行業界や航空機、鉄道、バスといった運輸業界はもとより、中国経済の50%以上を占めるサービス業界全体にとっても大ダメージです。1100万人もの人口を擁する武漢は実質閉鎖で、食料や日常品が入手困難になり価格は高騰、今後も消費は大きく落ち込むでしょう」(経済ジャーナリスト)
しかも、昨年の中国経済は6.1%という、過去30年間で最も低い経済成長に落ち込んだところ。
米中の経済戦争は今年に入った15日に関税の取り扱いに関する合意署名が行われ、「一時休戦」となったばかり。そこへ来てのウイルス拡大だ。人体への健康被害だけでなく、経済的体力を根こそぎにする意味でその感染力はまさに脅威だ。
「過去の研究や試算を例を取れば、2003年にSARSが蔓延した時は、中国の4〜6月期の経済成長率は前期の11.1%が9.1%に、2%も落ち込んだとされています。また、世界経済への損失は約4兆3700億円と見積もられている。今や世界2位の経済大国となった中国と、17年も前の当時とは経済規模が全く異なる上、武漢は1100万人もの巨大都市ですからね。どれだけの損失が生じるのやら」(同前)
もちろん、世界経済のつながりもやはり当時とは全く状況が違う。日本国内での感染拡大も当然、不安ながら、中国は日本にとってインバウンドで一番のお得意様だ。昨年はSARS流行時の20倍以上の中国人観光客が日本を訪れ、2020年には700万人が訪れると見られていた。2003年時の観光客の落ち込みと同レベルで観光客が落ち込んだとすれば、日本のGDPを2650億円押し下げるといった試算も出されている。
(猫間滋)