だんだんと遠近感も衰えてしまう。
「階段や段差を踏み外してしまったり、壁を曲がりきれなかったりと距離感をつかめなくなります。特に、片目ずつ症状が進行してしまうと起こりやすい。食事中にお箸で料理を摑み損ねる回数も増えていると思います」
そのまま症状が進行してしまうと、光が散乱してしまう症状まで現れてしまう。
「明るい場所がより明るく感じてしまいます。例えば、車を運転している時に、対向車のヘッドライトがかなりまぶしく感じる。さらに症状が進むと、外の自然光も目を覆わないと耐えられなくなってしまいます」
同時に視界に広がる色味にも変化が‥‥。
「全体的に黄色が補色されてしまいます。何を見るにも黄色のフィルターを通しているので、白色や青色が別の色に見えてしまいます。その代表的な物がガスコンロ。青い炎が見えにくくなっているので、調理中に袖口に火が燃え移るケースがあるだけに注意が必要になります。白内障の手術後に白い壁を見ると、1週間ほどは『青く見える』と患者さんに言われます。何年も続いた黄色の補色を取ることで、目の錯覚が起きてしまうようです」
もちろん、眼球の見た目にもわかりやすい変化が生じていて、
「眼球の黒目が白く見えている人は重症です。それでも平気な人は、その症状に気づいていないだけ。繰り返しになりますが、白内障は数十年をかけてゆっくり進行していく病。見えていないことに違和感を覚えないケースもままあります」
完治させるには手術の選択肢しかない。よくも悪くも1度しか手術できない仕様なのだ。
「眼球に入れた『眼内レンズ(人工水晶体)』がそのまま周囲の組織と癒着してしまいます。日進月歩でより優れた眼内レンズが開発されていますが、新しいものに交換したいと思ってもできません。とはいえ、現在でも白内障手術の技術は進んでいるので、同時に近視、乱視、遠視、老眼まで治るケースもあります。また、最近は『人工水晶体嚢移植』という自費診療もあります。アジア圏では当院でしかできない術式ですが、眼内レンズの交換が可能になります。特に若い人が悩まれる、眼内レンズの劣化にも対応できる最新の技術なんです」
複数の選択肢が用意されているほど、白内障手術は進んでいるのだ。まずは人間ドックよろしく眼科で検査を受けてみよう!
【白内障チェックシート⑮】
セルフチェックで4点以上は近くの医療機関へGO!
①年齢が50歳以上 1点
②遺伝的に近視の家系だ 1点
③目がかすんで疲れやすい 1点
④アトピーがある 1点
⑤目をぶつけたことがある 1点
⑥夜の街灯や月がダブって見える 2点
⑦階段や段差を踏み外すことが増えた(壁によくぶつかる)2点
⑧天気がいい日の外出はまぶしくて鬱陶しい 2点
⑨近視あるいは遠視が悪化したような気がする 3点
⑩床に水たまりがあるような錯覚を覚える(視界に霧がかっている)3点
⑪対向車のヘッドライトがまぶしい 3点
⑫年齢が75歳以上(該当する場合は①を除く)3点
⑬眼球の黒目が白あるいはグレーに濁って見える 4点
⑭ガスコンロの青色を認識できない(白色が認識できない)4点
⑮他人が見えているものが見えない 4点