気象庁は6月が終わる前に全国的に梅雨明けを宣言。関東甲信越、近畿、四国は過去最速を記録。そして連日続く猛暑も災害並みで、電力不足が目下の問題となっているが、この先心配されるのが水不足の問題だ。
特に西日本では5月上旬から降水が少なく、中国・四国地方の複数の河川で既に取水制限が行われ、「四国の水ガメ」とも呼ばれる早明浦ダムでは7月の貯水率0%まで懸念されている。
では、水が不足するとどんな打撃が生じるのか。
「過去の渇水で大きかったのがいわゆる『平成6年渇水』と呼ばれているものです。西日本から関東地方の広い範囲で水が不足し、福岡市の夜間の断水は295日にも及びました」(全国紙記者)
九州北部のほかにも、瀬戸内海沿岸、東海地方で上水道の供給が困難になって、時間指定断水が実施された。企業の生産ラインが短縮を迫られて、半導体や鉄鋼ラインは一部停止し、柑橘類などの農作物に被害を出し、畜産牛・鶏など家畜が熱死したという。
「1660万人の生活に支障が生じ、農作物の被害は約1400億円と言われています。水道が使えないから井戸を復活させたり、用を足した後に水を流せないので仮設トイレを設置したり、食器が洗えないから使い捨て食器が売れるなどしました。変わった影響としては、琵琶湖の水位が大幅に低下したことから、湖底から明智光秀が築いた坂本城の石垣が出現するなんていうこともありました」(同)
水不足は日常生活に不便をもたらすわけだが、上記のように産業への打撃で経済へ悪影響が出ることも心配だ。一般に水を多く使う産業は、化学工業、鉄鋼、紙パルプ・加工など。ただ化学産業や鉄鋼は工業用水の再利用ができる。そういった意味では、きれいな水が必要な紙パルプ・加工で深刻な打撃が予想される。もしかしたらトイレットペーパーが不足して買い占め…なんてことが起きるやもしれない。
そして今は、物価高が問題の時。産業に大きなダメージが生じれば、物不足に拍車がかかってさらなる物価上昇は不可避とも思える。コロナ、戦争、物価高、猛暑、そして今度は水不足といつまで困難が続くことやら。
(猫間滋)