3月20日、サッカー日本代表がワールドカップ(W杯)アジア最終予選第7節で、バーレーン代表に2-0で勝利。世界最速でのW杯出場を決め、日本中が歓喜に包まれた。
現在、2026年のW杯に向け世界各地で予選が行われているが、今回の開催地はアメリカ、カナダ、メキシコ。そして、4年後の開催地の一つとなるのが、モロッコだ。
ところが、そんなモロッコで今、とんでもない動物虐待が行われているというニュースが報じられ波紋が広がっている。国際部記者の話。
「W杯開催を準備しているモロッコが、同大会における『街の浄化』を理由に、野良犬300万匹を一掃するため大量虐殺を進めている、と報じたのは16日付の英日刊紙『ザ・サン』。同紙によれば、モロッコには現在も多くの野良犬が路上を徘徊し、狂犬病を持った犬も少なくない。そこで、小銃と拳銃で武装したハンターたちが街にいる犬たちを銃で撃ったり、毒劇物入り注射器を付けた棒で刺す、あるいは毒入り餌を食べさせるなどして大量に殺しているというんです。ただ、犬たちが即死するケースは少ないため、負傷したまま放置され、それをほかの犬が餌にする、というスプラッター映画さながらの光景が日常化しているというんです」
同紙の取材に答えた国際動物保護福祉連合(IAWPC)のレス・ワード会長によれば、現在モロッコでは動物保護施設の建設ラッシュが続いているが、実はその「保護施設」こそが殺処分施設であり、施設管理者たちは路上で捕まえた犬を投げ込んだあと、餌や水は与えず、唯一与えられるのは毒入りの餌だというのだ。
同氏は取材に対し「モロッコ政府は動物の権利が何を意味するのか分からない。彼らは犬を守るどころか、犬を処理するために『薬局』と『病院』を建てている」と語っているが、モロッコでも野良犬を残酷な方法で殺害することは違法行為。2022年にはある州の知事が街にいた犬を殺害したとして、罰金が課されたことが大きなニュースになったこともある。しかしIAWPCによれば、モロッコ政府はサッカーW杯のために大量虐殺を黙認。しかも国際サッカー連盟(FIFA)が、この事実を知りながらなんら策も講じていないことが、最大の問題だと指摘している。
「人口の99%以上がイスラム教徒であるモロッコでは、昔から犬を不浄のものとする考えが根付いていたことから、かつては当局が率先して野良犬狩りを行っていた時期もあったようです。しかし、時代が変わって犬もペットとして飼われるようになり、2019年にはモロッコ内務省主導で、殺処分をやめ不妊手術やワクチン接種に力を入れると発表。同省からの資金援助により施設でのワクチン接種数も増やしていくとしていました。なので、FIFAもモロッコ政府から提出された『動物の虐殺禁止と権利保護に対する意志を明確化する』という報告書には一定の評価を与えたと伝えられていたようなのですが…」(同)
さらに、前出のワード会長によれば、「犬ハンター」が狙うのはなにも野良犬に限ったことではなく、飼い犬もその対象で、無差別に捕獲されては施設送りにされているのだとか。その理由は、施設関係者らが愛犬を取り戻したいと訪れる飼い主から賄賂を受け取っているからで、それがもはや日常化している、とも語っている。
動物虐待反対を掲げる活動家たちは「美しいサッカーの試合を愛する大多数の人々は、このような残酷な状況を知りながら黙認するW杯を支持することはできないだろう。FIFAはモロッコのW杯開催国の地位を剥奪すべきだ」と激しく非難しているが、文化が違え習慣も意識も異なる。W杯開催まであと5年。状況が改善される日は来るのか。
(灯倫太郎)