「AI依存で人間退化」という研究論文!ヒトはどこまで「考えなくなる」のか

 AIは便利な一方、これに頼ると人間は「考えなく」なる。根拠がなくとも言えそうな見立てだが、データがそれを示したという研究論文がこのほど提出された。米カーネギーメロン大学の研究者が発表したもので、マイクロソフトとの共同研究だという。

 マイクロソフトは12兆円以上をAI開発に投じると打ち出しているから、あたかも自己否定的な研究のように思えるが、そこにはまた別の思惑も垣間見えるという。

「研究は、ホワイトカラーの人を対象に調査したところ、文章作成や推敲でAIを用いれば仕事の効率が高まる可能性がある一方、長期的には過度の依存や独力で問題を解決するスキルの低下につながる可能性があるとしています」(経済ジャーナリスト)

 そして厄介なのは、AIを信頼している人ほどAIの回答への精査にかける労力が減ると考え、逆にAIに批判的な人はAIの回答への精査により多くの労力を費やしている、ということだ。つまりAIを信用すると妄信につながるが、あまり信用しなければしないで労力が増し、なんとも便利なようでいて便利でないようなモヤモヤがつきまとう。

 ただ論文は研究結果を報告するだけでなく、提言も行っている。マイクロソフトとしてはそこが言いたいところなのだろう。

「論文では、AIの出した回答をダブルチェックする重要さを学ぶべきとしています。つまりAIの導入で人員削減できる現場があったとしても、それを監督する人間はやはり必要だと言っているようなもの。となれば人間のAIの普及に対する恐怖感も薄れ、またAI導入の環境整備の触れ込みにもなるでしょう。それは多くのAI開発に巨額を投資するIT企業の立場を代弁するものでもあります」(同)

 また同時に、この手の技術革新には、人間の認知活動に影響する心配が付き物だという提言もなされている。

 人間と最新テクノロジーの共存では、「ゲーム脳」や「スマホ脳」の危険性がこれまでも指摘されてきた。確かに最近は、SNSが国の政治をも左右するまで社会が電脳化している。今後は「AI脳」が懸念されることになるかもしれない。

(猫間滋)

ライフ