自治体の援助も「エアコン2027年問題」対策3カ条/佐藤治彦「儲かる“マネー”駆け込み寺」

 今、家電業界は“エアコン2027年問題”を抱えており、従来の基準よりも一気に13.8%から34.7%の省エネ性能の向上を求められ、この基準をクリアできていない低価格エアコンは姿を消す可能性があるというのが前回の話。

 都心に出た時に時間があったので大手量販店をのぞいてみた。8畳用でも工事費別で5万円から20万円近いものまで幅広い価格帯の商品がある。店員に「昔はもっと安かったですよね」なんて水を向けたら「お客さん、お住まいはどちらですか?」と質問してきたので「東京です」と答えた。

「買い替えですよね? 何年くらい使ってました?」

「10年くらい‥‥」

「ゼロエミ知ってます?」

 これは東京都が都民向けに行っている補助金制度の東京ゼロエミポイント。エアコンや冷蔵庫などで一定の基準を満たすと、東京都が費用の一部を負担してくれるものだ。小さな部屋用のエアコンでも9000円から2万3000円の割引があり、特に15年以上前の機種からの買い替えは、割引額がさらに大きくなる。

 以前からこのキャンペーンはあったものの、昨年の10月から制度が変更され、申請は店舗が行い、即時割引に変更された。消費者が行うことは家のエアコンの設置状況がわかる画像と、エアコンに明示されている製造年月日の画像を店舗側に提供するだけ。ただし、このゼロエミキャンペーンは、東京都に参加申請した事業者のみが対象。傾向としてネット店舗などでは扱っていないことが多い。

 買い替えるエアコンは2027年問題をクリアした上位機種だけでなく、低価格の機種も対象となるため、かなり安く買い替えることも可能だ。

 こうした援助は東京都以外の多くの自治体でも行われている。県全体で行っているところもあるが、多くは市区町村単位なので、早めに地元の家電量販店に問い合わせてみることをお勧めする。

 というのも、これらの補助金制度は実施期間が設定されているものの、多くの申請があり、予算の上限に達した場合、早期終了となるケースが多いからだ。

 最後に注意したいのが設置など工事費用である。エアコンの性能や設置場所によって標準工事費が異なるのはわかりやすいが、契約時に「現場で追加料金が発生する場合があります」と言われるのが通例だ。

 エアコンの標準工事は室外機を直置きできるか、配管ホースは4m以内かが特に重要。私の部屋は天井まで2メートル40センチ程度なので配管は4メートルも必要ない。なので今まで追加料金などを請求されたことはなかったが、今回、設置時に3960円の追加料金を請求された。エアコン本体から出た水を外部に排出する断熱ドレンホースの費用だという。

 面倒なのですぐに払おうかとも思ったが、今回の原稿にすることを決めていたので、ちょっとこだわった。何しろ工事の人の話だと「9割の現場で断熱ドレンホースの追加費用をお願いしている」という怪しげな理由だったからだ。

 カスハラ(カスタマーハラスメント)が問題になる時代なので、冷静に店舗と話し合ったところ、負担なしとなった。だいたい9割の現場で負担してもらうものなら標準工事に含めるべきものだろう。

 しかも他の大手量販店に問い合わせたところ、断熱ドレンホースが必要になるのは超高層のマンション。少なくとも7、8階以上で結露の心配がある現場とのこと。そして、その追加費用は1000円だった。

 私の住まいは2階で、どう考えてもおかしい。今回エアコンを購入した量販店は他と比べて2000円ほど標準工事費が安い。その帳尻を現場で合わせているのか、とも想像した。

 (1)5~6万円の安いエアコンは早めに。(2)自治体の買い替え援助がないか調べる。(3)ヘンテコな追加工事費は払わない。これがエアコン購入時のポイントだ。

佐藤治彦(さとう・はるひこ)経済評論家。テレビやラジオでコメンテーターとしても活躍中。8月5日に新刊「新NISA 次に買うべき12銘柄といつ売るべきかを教えます!」(扶桑社)発売。

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