「戦死した北朝鮮兵士の顔を焼いている」ゼレンスキー氏が訴えた“残虐ロシア”情報戦

 この映像が本物なら、まさに鬼畜にもまさる卑劣極まりない所業と言えるだろう。

 先ごろ、ウクライナのゼレンスキー大統領がXに「戦死した兵士の顔を焼いている様子」とする動画も添付し、ロシア軍により戦死した北朝鮮兵の顔が焼かれている、と主張したことで内外に大きな衝撃が走っている。

 韓国情報機関によれば、10月以降、ロシア西部クルスク州で死亡した北朝鮮兵はすでに百人単位に達しており、負傷者も約1000人を超えているという。

「ウクライナ国防省情報総局によると、クルスク州に派兵されているのは、朝鮮人民軍第94独立旅団で、彼らにはロシアの名前と出生地が記載された“偽”の身分証が与えられているようです。ウクライナ軍が死亡した北朝鮮兵の身分証を押収したところ、その身分証にはロシア風の名前が記され、出身地はロシア南部のトゥバ共和国。しかし、写真も印鑑がなく、署名だけがハングルで書かれていたといいます。それが事実であれば、ロシア軍が彼らの存在を隠そうとしているということです」(ウクライナ情勢に詳しいジャーナリスト)

 ウクライナ軍が「顔が焼かれている兵士」と指摘するのは、12月中旬までにクルスク州のプレホボ村やヴォロジバ村、マルティノフカ村付近で死傷したとされる北朝鮮兵士30人。米韓とウクライナ情報機関の推計では、現在ロシアにいる北朝鮮兵の数はおおよそ1万2000人。ただ、ロシア、北朝鮮ともにロシア領内の北朝鮮兵の存在については公式に認めていないのが現状だ。

「現地メディアでは、国際法違反を犯しているロシア側が各国からの非難をかわすため、北朝鮮兵士の顔を焼いて正体を隠しているのではないか、と報じています。しかし公に発表していないだけで、北朝鮮兵士のロシア派兵、実戦投入は周知の事実で、今さらロシアがそこまでして隠ぺい工作をする意味があるかどうか。ただ、政府が自国領土奪還に北朝鮮兵力を借りたことが公になれば、プーチン政権の権威も失墜、求心力低下は必至です。つまり、亡くなった北朝鮮兵の身元を隠す理由は、国際社会に対してではなく、むしろ国内向けの隠ぺい工作であるとも考えられます」(同)

 動画を投稿したゼレンスキー氏はXで、《ロシアは北朝鮮兵に、ウクライナ軍の拠点を攻撃させるだけでなく、北朝鮮兵の損失を隠そうとしている。彼らは、北朝鮮兵の存在を隠そうとしている。訓練中は、彼らは顔を出すことも禁じられていた》として《これは敬意の欠如、すなわち現在のロシアに蔓延する、あらゆる人間的なものを軽視する態度の表れだ》と、この残虐な行為について批判。そして、こう続けている。

《北朝鮮の人々がプーチンのために戦い、死ぬ理由など何一つない。そして死んだ後でさえ、ロシアが彼らに与えるのは屈辱だけだ。この狂気を止めなければならない。確実で永続的な平和によって。そして、この利己的な戦争に対するロシアの説明責任によって》

 しかし、これまでにも両国の間では、この手の情報戦が数多く繰り返されてきことも事実で、ウクライナは様々な映像を公開し、ロシアの残虐性を訴えてきた。AIを使えば簡単にフェイク画像が制作できる時代、はたしてこの映像が本物なのかを判断することは難しいだろう。

 次期トランプ政権始動を目前に控え、いよいよ何らかの形での決着が見え始めてきたウクライナ情勢。2025年まであと1週間。世界が大きく動こうとしている。

(灯倫太郎)

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