15年ぶりの自公過半数割れとなった総選挙。石破茂首相は選挙の結果を受け野党との連携を模索しているが、一方で自民党内では“石破降ろし”も加速しかねない状況。そんな中、笑いが止まらない男がいるという。自民党の麻生太郎最高顧問だ。
自民党関係者が明かす。
「麻生氏は総裁選で潰そうとした石破政権が大敗したことに加え、石破首相誕生に加勢し地元福岡で“麻生王国”を脅かし続けていた武田良太元総務相が11区で日本維新の会新人に敗れ、小躍りしているともっぱらですよ」
武田氏は裏金事件で党役職停止1年の処分で比例重複が叶わず8選の道が絶たれたわけだが、これまで福岡で着々と力をつけ麻生氏との戦いは熾烈を極めていた。地元県議の話。
「2人の不仲説が表沙汰になり始めたのは、16年の衆院福岡6区補選の頃から。鳩山邦夫元総務大臣の死去にともなう補選には、邦夫氏の次男の二郎氏(福岡県大川市長=当時)が弔い合戦で立候補した。しかし福岡のドン・麻生氏は、蔵内勇夫氏(自民党福岡県連会長=当時)の長男の謙氏を担ぎ分裂となったわけですが、武田氏や菅義偉氏グループは二郎氏を担ぎ、二郎氏が圧勝したのです」
以来、麻生対武田の争いは続く。19年の福岡県知事選では、麻生氏が推した元厚労省官僚に対し、武田氏が現職知事を推して圧勝。逆に23年の北九州市長選では麻生氏が裏で支援した候補が武田氏の推した候補に競り勝っている。
「そうした中で最近、武田氏は高齢の麻生氏を横目に『王国も終わり。俺は将来総理も目指す』などと周囲に漏らし自信を深めていたとも聞きます。それだけに重複立候補ができなかったとはいえ、敗北は相当ショックだったのではないか」(同)
一方の麻生氏について、政治アナリストが言う。
「自分の庭から目の上のタンコブが消えた上に、永田町では石破氏が一気に苦境に陥った。その石破氏を裏で支えていたと言われる菅義偉元首相には体調不安報道が出ている。地元の足場が再び固まり総裁選で高市早苗氏を担いで接戦を演じさせた麻生氏が、次の政局のキーマンとなることは間違いありません」
ベテラン自民党議員は今後の展開をこう予測する。
「麻生氏がもう一度、高市氏を担ぎ石破降ろしに走るかですが、高市氏は総裁選で支援した衆院推薦人だけ見ても、旧安倍派を中心に多くの仲間が消えた。さらにまだ『政治とカネ』への逆風が止まない中で旧安倍派に支持される高市氏が総裁選に再出馬するのは早すぎるだけに、もう少し時間を置くだろう。ただ、仮に石破退陣論が党内で沸騰した場合、総裁選前後で関係を詰めてきた茂木敏充前幹事長を担ぐ可能性はある。派閥を解消していない麻生派と旧茂木派、一定の支持者を持つ2人が手を組めば自民党内では勝てる。また麻生氏は、以前から今回の選挙で躍進した国民民主党と組める布石を打ってきた。国民民主の後ろ盾である連合の芳野友子会長と麻生氏は何度もメシを食う間柄。茂木氏も連合幹部とは太いパイプを持つ。石破氏も国民民主への打診は考えているようですが、政策や首相選びなどでその都度手を組む部分連合の主導権は、麻生氏が握っている」
衆院選では早々に15選を決めていた84歳キングメーカーの動きが注目される。
(田村建光)