本当に国際放送部門の人材不足があったにせよ、それは人材を育成してこなかった自社の責任。この甘すぎる対応に局内からも、「これじゃまるで偽装辞任だ!」と批判の声が続出しているのが、NHK“尖閣放送事故” 辞任理事のわずか1週間での“再雇用”発覚騒動だ。
NHKのラジオ国際放送などの中国語ニュースで、中国籍の外部スタッフ男性が尖閣諸島について「中国の領土」などと発言。さらに「南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな」などと言い放ち、NHKの管理体制そのものが大きく問われる騒ぎに発展したのは8月19日のことだ。
この前代未聞の放送事故を受け9月10日、同局の国際放送担当である傍田賢治理事が同日付で辞任。さらに稲葉延雄会長ほか役員4人にも月額報酬50%の1カ月自主返納処分を行われたほか、国際放送局長ら5人にも減給などの懲戒処分が下された。
ところが、傍田前理事が辞任から1週間後の17日付で契約職員として復帰していた、と26日付けの毎日新聞が報道。この衝撃ニュースが一気に各メディアを駆け巡ることになった。
元NHK職員で現在は民放キー局に勤務する放送関係者が語る。
「NHKメディア総局のエグゼクティブ・プロデューサーとして再雇用された傍田前理事は、モスクワ支局長やアメリカ総局長などを歴任。関連会社社長を経て今年4月に理事に就任したばかりだったようです。長年、国際畑で実績を積み上げてきたこともあり、実務能力にたけ幹部からの評価も高かったそうで、“放送事故”の際も内部からは、『辞めさせるのはもったいない』という声が上がっていたようです。とはいえ、NHKとしては今回の問題で会長らへの処分を行い、問題発言の主である外部スタッフに対しても、東京地裁に1100万円の損害賠償請求を提訴している。辞任は避けられなかったのでしょうが、そんな騒ぎの中、シレッと現場復帰させたわけですからね。呆れてものが言えませんよ」
当然のことながら、報道を受けSNS上には《まさか偽装辞任までやるとは…完全に国民を舐めてるな!》《特権階級なら何をやっても許されるのか、とんだ茶番だ!》等々、厳しい意見が続出。NHK内部からも「いくらなんでも、やり過ぎ。偽装辞任と言われても反論できない」といった批判の声が噴出しているという。
放送事故以降、NHKは再発防止策として生放送を事前収録に切り替えたほか、今後は早期に「AI音声」による読み上げを導入すると発表している。一方、本国に帰国したとされる中国人元外部スタッフは、中国紙「北京日報(電子版)」のインタビューに応じ、「日本政府とメディアが侵略の歴史を否定し、軍国主義を美化していることが許せなかった」と発言。ニュースの原稿が靖国神社に書かれた「軍国主義に死を」という落書きの文言に触れなかったことについて、「NHKは意図的に避けたのだろう。国民を欺き、客観報道に反している」と、自らの持論を展開しているようだ。
スタッフによる意図的な放送事故だけでも許しがたい問題なのに、その責任者をわずか1週間で再雇用するNHKとは、いったいどんな社会通念や倫理観を持った組織なのか。国民のさらなるNHK離れが加速しそうだ。
(灯倫太郎)