先ごろ、日本マクドナルドホールディングス(HD)は、日本マクドナルドの社長に日色保上席執行役員が昇格する人事を発表した。これまでHDと日本マクドナルドの社長を兼任していたサラ・カサノバ氏は、HD社長は留任、日本マクドナルドでは会長職に就くことも明らかになっている。
今回の動きについて巷では《一番辛いときに投げ出さずよく頑張った》《タフですごい経営者だと思う》《危機的状況を覆した社長。マーケティングは素晴らしかった》など、カサノバ氏の功績を讃える声があがっている。
「カサノバ氏が業績の低迷が続いていた日本マクドナルドの初の女性トップに就いたのは2013年。04年から09にかけての日本勤務時代、マーケティング本部長として今ではお馴染みの『えびフィレオ』や、『メガマック』を成功に導いた手腕が期待されての社長就任でしたが、就任早々に中国メーカー製のチキンの期限切れ問題が発生。さらにその翌年に起きた“異物混入問題”で、15年には300億円を超える過去最大の赤字を記録し、マクドナルドの日本撤退説まで飛び出すほどのピンチに見舞われたのです」(経済評論家)
しかし、そこからカサノバ氏の改革が始まる。まず15年にスマホのアンケートアプリ「KODO」などを使って利用客の感想や要望を吸い上げ、マクドナルドに対する不満を徹底的に洗い出した。
「不満の改善をしたのは客ばかりでなく、従業員の給料を上げることでモチベーションを高めることにも努めました。赤字まみれの中での賃上げには業界内で懐疑的な声があがりましたが、結果的に顧客満足度の向上、16年からの売上回復へとつながったのです」(外食産業専門紙関係者)
さらに17年4月に投入した具だくさんの「グラン」シリーズは、発売から5日で300万食を突破する大ヒットを記録。マクドナルドを一気に黒字に押し上げ、V字回復を遂げた。
「客の意見を聞くために全国を渡り歩く、カサノバ氏の徹底した現場主義が実を結んだ形です。新社長の日色氏も、前職のジョンソン・エンド・ジョンソンの営業からの叩き上げで現場主義。カサノバ氏はそうした安心感から、バトンタッチをする相手に選んだのでしょう」(前出・専門紙関係者)
新体制のもと、さらに安定した成長を遂げられるか。
(小島洋三)