NHKが1955年(昭和30年)に放送した長崎県の端島「軍艦島」での人々の暮らしを記録したドキュメンタリー「緑なき島」。同番組で使用された炭坑内の映像を巡り、韓国側は「戦時中、朝鮮人に対する強制労働や虐待があった」と主張。しかし昨年6月、なんのことはない、この映像の撮影に使われたフィルムが番組放送と同じ年の55年製造だと判明。つまり、映像は終戦から10年後に撮影されたていたことがわかり、NHKに対し「反日放送だ!」との批判が大噴出したことは記憶に新しい。
ところが、そんな騒動から1年後の8月19日。NHKがまたもや“反日放送”と捉えられかねない失態をやらかし、非難の嵐に晒されている。
問題の番組は、NHKの短波ラジオなどの国際放送とラジオ第2放送での中国語ニュース。靖国神社で落書きが見つかったニュースを報じた後、外部スタッフが日本固有の領土である沖縄県・尖閣諸島を「中国の領土である」などと発言。むろんそんな文言は原稿には一行もなく、NHKではHP等で「深くおわび申し上げます」と謝罪。このスタッフと業務委託契約を結んでいる関連団体を通じ、本人に厳重に抗議したと自社のニュース等で報じている。
「男性スタッフは中国籍の40代。日本語の原稿を中国語に翻訳してラジオで読み上げる業務を担当していたそうです。男性にどんな意図があったのかはわかりませんが、NHKのHPによれば同番組は『時事問題や国の重要な政策、国際問題に関する政府の見解、日本の文化などについて正しく外国に伝える』国際番組であることから、今年度、国からは35億9000万円の交付金が出ているという。公共放送であるNHKの責任は相当重いと言わざるを得ないでしょうね」(民放ディレクター)
NHKの偏向報道については、かねてから問題にする声も多く、NHKのOBたちからも、「結論ありきではないのか」との声が上がっていたことは事実だ。大きな話題になったのが、2017年9月に東京・永田町の星陵会館で開催された、ジャーナリストの櫻井よしこ氏主宰によるインターネット番組「言論テレビ」放送5周年の公開収録。登壇したのは櫻井氏のほか月刊誌「Hanada」の花田紀凱編集長、櫻井氏の番組に出演している女性ジャーナリストら「言論さくら組」など。
「NHKのニュース番組で気象情報に出演していた気象予報士の半井小絵氏は、ずばり『NHKにいるときには、あんなに偏向報道をしているとは思いませんでした』と指摘し、『どこよりも視聴率を気にしている。スポンサーもないので気にしないと思われがちだが、視聴率をとっても気にしている。(当時、天気予報になって)チャンネルを変えられないようにとの指示が出ていた』とその内情を暴露し会場を沸かせていました」(同)
また沖縄県出身のキャスター我那覇真子氏も、同県読谷村で沖縄戦の遺品などが壊された事件に触れ、「少年たちのいたずらで政治的な思惑がなかった。それが特定の団体による犯行だったかのような報道された」と批判している。
元NHKアナで現在はTBS系「サンデーモーニング」で総合司会を務める膳場貴子氏も朝日新聞のインタビューで、「NHKは組織が大きいので、組織として物事を決定していく。(中略)報道番組で比べると、記者やディレクター、キャスターが『自分はこう考える』と意見したり、問題提起をしたりすることは民放では当たり前ですが、NHKは少ないですね」「特に政治ニュースに関しては、アナウンサーは基本的に、記者と打ち合わせて想定した質問以外のことは自発的には聞けない、という体制でした」と語っている。
NHKが持つ独特の官僚体質と風通しの悪さ…それが偏向報道を生む要因なのかもしれない。
(灯倫太郎)