【新連載】健康宅配チェックシート〈熱中症〉(2)救急車を呼ぶべき症状とは

 人間の皮膚表面で〝打ち水〟よろしく体温調整機能を担っているのが「発汗」だ。ところが日頃の不摂生がたたって、汗をかきにくい体質になるケースもあるようだ。

「偏った食生活や運動不足によって、体脂肪が増えて汗をかきにくくなった人は注意が必要です。体内にこもった熱が逃げなくなり、『暑熱順化』という体が暑さに慣れることができなくなる可能性が高まります。暑い場所で顔が赤くなるのも熱がこもっている症状。顔の毛細血管を開いて必死に熱を逃がそうとする状態になります」

 これまで紹介したのはⅠ度の症状。これがⅡ度の症状になると、現場の応急処置だけでは間に合わなくなる。

「平熱よりも高い37度~38度の熱が出て、頭痛や倦怠感の症状が現れます。ここまでくると気持ち悪くなって吐いてしまうことも少なくない。意識障害で落ち着きがなくなったり、物事に集中して取り組めなくなったりしてしまいます。すでに中等症で救急車を呼ばないといけないレベルです。体裁を気にして呼ばないなどということは絶対にやめてください!」

 というのも、別の重病までをも引き起こす可能性が無視できないのだ。

「脳卒中になるケースがあります。脱水症状になると血中の水分量が減少するため、赤血球の成分量が〝濃縮〟されてしまいます。そうなると、血栓ができやすくなってしまい、脳卒中のリスクを高めてしまうのです。倦怠感を超えて体に力が入らない、呂律が回らないといった症状も現れます」

 とうとうⅢ度になると、絶命と隣り合わせとなる。

「肝臓や腎臓などの臓器障害、あるいは意識のない状態になります。たとえるなら、雪山で遭難した先の山小屋で眠るように意識を失うイメージでしょうか。人によってはけいれんを起こすケースもあります」

 悲劇を防ぐため、我慢は禁物なのだ。

「とにかく、室内では冷房をつけてください。気温が下がる夜も、つけっぱなしを推奨します。日中の熱は部屋の天井や壁にこもって、夜に放射されるものです。冷房温度の目安として『28度』と言われていますが、別に根拠のある数字ではないと聞きます。自分が快適だと思う温度まで下げてください。あと、朝ごはんを食べずに外出するのもご法度。水分と塩分が不足した状態で猛暑の中に飛び込むことになりますからね」

 まさに「飛んで火にいる夏の虫」。無策のままでは日本の夏は生き抜けないのだ。

【熱中症チェックシート⑫】

Ⅰ度は涼しいところで水分&塩分補給、Ⅱ~Ⅲ度は今すぐ119コール!

①めまいや立ちくらみがあるⅠ度
②手足がしびれてきたⅠ度
③外出時にこむら返りを起こしたⅠ度
④夜中に目が覚めて飲む飲料水がおいしいⅠ度
⑤オシッコの色が濃くなったⅠ度
⑥顔の赤みが引かないⅠ度
⑦たくさん寝たのにアクビが止まらなくなったⅠ度
⑧風邪をひいていないのに平熱より1~3度高い熱が出たⅡ度
⑨急に落ち着きがなくなったⅡ度
⑩物事に集中して取り組めなくなったⅡ度
⑪眠るように意識を失ったⅢ度
⑫けいれんを起こしてしまったⅢ度

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