【新シリーズ】マネーの急所(1)年金積立金運用「年間収益45兆円」にあやかる

 7月5日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は23年度の収益が約45兆円だったことを発表した。しかも、黒字は4年連続というから、もはや青天井のボロ儲けとなっているのだ。果たしてそのカラクリは? 専門家に聞いた。

 そもそもGPIFとは、どんな組織なのか。ファイナンシャルプランナーとしてユーチューブなどで情報を発信している松尾光剛氏が説明する。

「国民年金・厚生年金・共済年金など我々が毎月支払っている保険料の一部を運用している組織です。年金は賦課方式という、若者世代が支払っている保険料で賄われています。現在は毎年余剰が出るほど保険料が集まっていますが、少子高齢化によって今後は余剰がなくなり、若者世代から徴収した保険料では年金を賄えなくなってしまう。それを見越して、保険料の余剰分を運用しているのがGPIFという機関なのです」

 45兆4153億円という過去最高収益を叩き出したGPIF。だが、その収益を生み出す方法が株や債券などによる“運用”と聞くと不安になる人もいるだろう。元証券ディーラーであり、現在は投資家兼経営者のたけぞう氏によれば、GPIFは設立以降、毎年収益を出し続けているという。

「コロナ・ショックの時などは1年を通じてマイナスになることはありましたが、01年の設立から23年まで年利4.3%の黒字。金額で言えば153兆円のプラスです。昨年度に関して言えば、国内外の株式市場が過去最高の値段を記録していることを追い風に約45兆円、年利では22.67%の上昇となりました」

 リーマン・ショック、コロナ・ショックなど経済危機を潜り抜け、150兆円以上の収益を上げているだけにその実績は確かなものだ。この資金運用という方法で、これほどまでの収益を上げられる要因は、GPIFが扱うお金の大きさ、いわゆる元手にある、と松尾氏は説明する。

「01年に設立されるまでは、年金福祉事業団という財政投融資を行う組織でした。財政投融資とは、例えば、年金の積立金からお金を貸して建物を作る。その融資の利息で年金の余剰を増やしていたんです。ただ、それが難しくなってきたため、株式や債券で運用をスタートしました。すでに、その当時に積み立てられていたのが100兆円弱。この莫大な資金を運用しているため、得られる収益も大きくなるというわけです」

 当然、元手が大きくとも運用に失敗すれば元本割れのリスクもある。それでも20年以上黒字を続けることができたのは、なぜなのだろうか。それはひとえに手堅い投資方法にある、とたけぞう氏は説明する。

「GPIFのポートフォリオ(保有銘柄)は、国内・国外の債権と国内・国外の株式で組まれています。それが、ほぼ25%ずつで運用されていて、しっかりリスク分散がされている。また、GPIFは株式の配当金や債券の利子といった、今後も継続的に収益が期待できるインカムゲインが大きいですね。これまでの153兆円のプラスのうち、インカムゲインだけでも51兆円。今の日本企業の配当金は過去最高値まで膨らんでいるので、インカムゲインについては今後も、そうそう減ることはないでしょう」

 あわよくば、今すぐにでも、あやかりたいものだが‥‥。

(つづく)

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