韓国が大警戒する北朝鮮テロ“5つのターゲット”

 南北関係が冷え込む中、韓国政府は5月に入り、外国にある韓国大使館や領事館を狙った北朝鮮によるテロの恐れがあるとして、テロ警戒レベルを引き上げると発表した。韓国の情報機関は、大使館職員や国民などを対象に北朝鮮が複数の国でテロを準備している兆候を多数入手したとしている。

 今回のテロ警戒レベルの引き上げ対象になったのは、カンボジア、ラオス、ベトナムにある3つの大使館、中国北東部瀋陽とロシア極東ウラジオストクにある2つの領事館の計5カ所で、4段階あるレベルのうち最も低い水準から、上から2番目に高い水準に引き上げられた。

 現在のところ、それ以上大きな動きはないが、ちょうど2年前に尹錫悦大統領が就任して以降の南北関係は冷えきっており、北朝鮮が韓国を政治的にけん制する狙いで外国にある韓国権益を狙ったテロを行う可能性は排除できない。北朝鮮は尹大統領が米国や日本とグループになって圧力を掛けてくることに憤慨している。

 過去、北朝鮮は韓国に向かって度々テロを繰り返した。1968年1月には、韓国兵士に偽装して韓国領内に入り込んだ北朝鮮の武装工作員たちが朴正煕大統領の暗殺を計画。ソウルにある韓国大統領官邸付近で治安当局と銃撃戦となり、多くの犠牲者が出た。1983年10月には、全斗煥大統領を暗殺するためビルマ(ミャンマー)に潜入した武装工作員らがアウンサン廟で爆破テロを実行し、韓国要人ら20人以上が死亡、40人あまりが負傷した(ラグーン事)。また、1987年11月にはイラクのバグダッドからバンコクなどを経由してソウルに向かっていた大韓航空機に仕掛けられた時限爆弾が爆発し、乗員乗客115人全員が死亡した。この事件について、北朝鮮工作員は1988年のソウルオリンピックを妨害するため大韓航空機を爆破せよとの命令を受けて犯行に及んだと動機を明らかにしている、

 昔と比べ、航空テロ対策は厳格化され、韓国国内に潜入するのも簡単ではない。よって、北朝鮮が韓国を狙うテロを実行するなら、外国にある韓国権益となろう。韓国にとって悪夢の再来となるのか。

(北島豊)

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