国民の政治不信を高めるだけ高めた自民党の裏金問題。結局は、最大のブラックボックスだった森喜朗元首相の聞き取り結果は「関与なし」、次期衆院選不出馬を宣言した二階俊博前幹事長の責任は不問、当の旧清和会5人衆の処分でも、政権寄りの萩生田光一前政調会長と松野博一前官房長官は党の役職停止に留まり、しりすぼみの幕引きとなった。
それもそのはず、岸田首相の頭の中は4月10日にホワイトハウスで行われる日米首脳会談訪米のことでいっぱいだからだ。
国内は裏金一色だが、じつは海外では日米首脳会談とその先の国際情勢の変化を見通すような報道がなされている。
「3月24日付けの英フィナンシャル・タイムズが、日米安保の大幅な見直しが打ち出される可能性について報じています。それによれば、現在は在日米軍司令部はハワイのインド太平洋軍の出先機関のような扱いになっているところを、日本の司令部の権限を強化して、ガッツリと対中国シフトを固めようというのです」(全国紙記者)
その通りだとすれば、日米安保は1960年の改定以来の大幅変更となって、それこそ元安倍首相が念頭においていた祖父・岸信介の大業とも重なる。だが考えてみれば、バイデン大統領も岸田首相も年内には政治の中心から遠ざかっているかもしれないのだ。
「特に岸田首相は、自民党総裁任期の9月いっぱいまでというのが大方の見方です。もっとも日本の首相が変わったところで、外交・防衛で大きく方向性が変わることはないですし、政権バランスもさほど変化するとも思えません。ただし、アメリカの場合は『もしトラ』が実現すれば、壮大なちゃぶ台返しが行われて、協定が白紙に戻される可能性もあります」(同)
それ以前に、あの岸田首相がそんな大それた約束をできるはずがないと思われるかもしれないが、「防衛3文書の改定」「防衛費倍増」と、この分野では歴代の内閣が果たせなかったことをシレっと決めてきたのが岸田政権の実像でもある。
だから今回も、とんでもない置き土産を残すかもしれず、せめて禍根を残すことにならなければ良いのだが。
(猫間滋)