日本への歩み寄り!?北朝鮮女子サッカー「ラフプレー封印」のウラ事情

「勝てばパリ五輪出場」という、日本対北朝鮮の女子サッカーアジア最終予選では、周知のように「なでしこジャパン」が北朝鮮を破り、出場権を掴んだ。

 北朝鮮は後半に1点を返したものの最終的には1-2で敗れた。だが、サッカージャーナリストによれば「気になるシーン」もあったという。

「前半45分、MFチェ・クムオクのシュートがゴールラインを割りかけたところ、それをGK山下杏也加が間一髪、右手でボールをかき出すというスーパープレーがありました。北朝鮮選手たちが、ゴールラインを割った、と両手をひろげて主審に詰め寄るシーンもあり、すわ、杭州アジア大会男子サッカーでの大騒動再燃か、と緊張が走りましたね。でも、それを北朝鮮のリ・ユイル監督が制止。その後も際立ったラフプレーはありませんでした」

 杭州アジア大会男子サッカー準々決勝の日本対北朝鮮戦はラフプレーの連続で、1-2で敗れた北朝鮮の選手たちが、日本のPK判定を不服として審判に詰め寄って大騒動になった。

「今回の試合はパリ五輪の出場権がかかっていることもあり、北朝鮮としては何が何でも勝ちたかったはずです。しかも相手が目の敵の日本ということもあり、相当厳しい試合内容が予想されていたのです。しかし、全体を通してクリーンなプレーの連続で、観戦していた記者の間から疑問が出たほどです。ちょっと北朝鮮らしくないのではと…」(前出・ジャーナリスト)

 目に余るラフプレーは論外だが、優等生すぎる北朝鮮チームに違和感を覚えた記者もいたようだ。そして、そんな疑問に対する1つの答えとなりそうなのが、直近の北朝鮮をめぐる政治情勢だという。国際部記者が語る。

「実は、2月14日に韓国が、国交を断絶していたキューバと65年ぶりの国交正常化を発表したんです。北朝鮮にとってキューバは、社会主義を標榜し、反米同盟を結成した『最後の同盟国』。そんなキューバと韓国が緊密になることは、北朝鮮の行く末に影を落とすことにもなりかねない。だからか、15日には、金正恩総書記の妹である朝鮮労働党副部長の与正氏が日本に対し、『両国は新しい未来を拓くことができる』と、異例の談話を発表しました」

 これまでとは潮目が変わったような日本への対応は与正氏の談話だけではない。正恩氏本人による能登半島地震への「お見舞い」電報もあった。

「窮地に陥りそうな北朝鮮としては、何としても日本に擦り寄り、日朝関係を正常化させて経済援助等を引き出したいと考えているのではないでしょうか。そのためにはあまり日本を刺激したくない。男子の試合があった昨年10月時点では韓国とキューバの事案もなかったのでラフプレーの連発でしたが、今回はそうはいかない。それが、女子サッカーのクリーンなプレーに繋がっているのでは、という声もあるようです」(前出・記者)

 クリーンなプレーは大いに歓迎したいが、北朝鮮による「歩み寄り」には相応の事情があることを心すべきかもしれない。

(灯倫太郎)

スポーツ