脳や宇宙分野で最先端も「地下」は苦手!?イーロン・マスクが悪戦苦闘する「新交通システム」

 EVのテスラはもちろんのこと、NASA(アメリカ航空宇宙局)の宇宙開発でのトケット打ち上げを事実上独占し、衛星インターネット通信で極めて重要な通信インフラとなっているスターリンクを運営するスペースⅩ。とうとう人の脳にチップを埋め込んだ実験を開した「ニューラリンク」はイーロン・マスクが手掛ける事業として話題になっているが、意外と知られていないのが「トンネル事業」で土を掘っているということだ。

 だがマスクのこのトンネル事業、つい先日アメリカのブルームバーグが報じたところによれば、成果を上げていないどころではなく、惨憺たる実情にあるという。

「ラスベガスで2つのホテルとコンベンションセンターを結ぶ『ベガスループ』というトンネルを掘っているのですが、安全基準違反が常態化し、作業員が化学物質が含まれる泥を毎日掻き分ける作業をしているというのです。そして実際に火傷を負う事故が発生し、ネバダ州が調査中。これまでにも1年間で8件の違反が発覚し、罰金が課されています」(経済ジャーナリスト)

 工事を行っているのは、16年にスペースX内の事業を分離・独立させて設立された「ザ・ボーリング・カンパニー」という会社。マスクは17年に「ハイパーループ」という計画をツイッター(当時)でブチ上げ、全米の各都市をトンネルを通じた音速の輸送システムでつなぎ、例えばニューヨークからワシントンD.C.まで航空機でおおよそ1時間半前後の時間がかかるところを、30分かからなくなるとしたのだった。ところが…。

「この時、すでに政府から口頭での承認を得ていたとしていましたが、実際に承認は得られず。大谷翔平で話題のドジャースタジアムにロサンゼルスから乗り入れる『ダッグアウト・ループ』を含めた複数の高速鉄道構想を打ち出したものの、いずれも構想のみで頓挫。しかも現在、唯一行われているこのベガス・ループも、コンベンションセンターへ行く客を乗せるだけなので、コンベンションが行われている期間限定。しかも時速40マイル(約64キロ)のテスラ車のシャトルバスというから、何ら新しいものではありません」(同)

 つまりは大風呂敷を広げては見たものの、現実には絵に描いた餅で、さらには工事段階で問題大アリというのだから何とも先行きが思いやられる。宇宙や人の脳といった新しい分野では先を行くが、地下という古い世界ではあの鬼才も通用しないのかもしれない…。

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