国立競技場で行われた女子サッカーのパリ五輪最終予選では、日本代表「なでしこジャパン」の出場権獲得よりも北朝鮮代表の「変貌」ぶりに注目が集まった。
4年に一度の決戦にもかかわらず、2万777人の観衆しか集まらなかったが、
「真っ先に完売した券種がアウェーの北朝鮮代表の3000枚の応援席だったんです」(サッカー担当記者)
試合は2-1と敗れたももの健闘したが、会見では北朝鮮のリ・ユイル監督が「日本全国から同胞が3000人も集まってくれたのに結果が出せなくて申し訳ない」と突然号泣。かと思えば韓国の東亜日報の記者の質問には「君の会社と記者は我々を逆撫でする質問しかしないから、私は受けない」と拒絶する場面もあった。
今回の女子北朝鮮代表は20歳~22歳が中心。過去には多くのラフプレーが目立ったが、リ・ユイル監督は「フェアプレーと相手を敬う心、フェアプレーの気持ちを常に持て!という教育は彼女たちが小さい頃から徹底してきた」としていた。
実はこの監督の父親は、1966年英国W杯でアジア勢初のベスト8入りした北朝鮮代表GKリ・チャンミョン氏の息子。北朝鮮国内では有名人物の1人だという。
「これまで女子の北朝鮮代表は軍隊式のトレーニングしか受けてこなかった。今回来日したチームは徹底したフィジカルトレーニングと、勝てる戦術を植え付けられた聞きます」(日本サッカー協会関係者)
日本との戦いを2試合視察した男子代表の森保一監督も「日本サッカーの弱点をきちんと突いてきた」と話していた北朝鮮。今回の連戦に向けては、「冬の平壌はサッカーをやることができない」(北朝鮮サッカー協会関係者)からと、中国の南部で長期合宿を行っていた。
「試合では主力選手のほとんどが米国のナイキ社製のスパイクを履いていました。北朝鮮で合宿をしていたら入手できないスパイクです。イ・ユイル監督の“権限”がいかに大きいかわかりました」(サッカー担当記者)
もちろん、北朝鮮入国はスポーツの国際大会だからという「特例」を受けてのものだったが、女子サッカーは明らかに変わりつつあるようだ。
(小田龍司)