「日本の65歳は元気」新藤経済再生相の発言に批判「死ぬまで働かせる気か!」

 口は禍の元、と言われるが、つい本音が出てしまったということなのだろう。2月11日、新藤義孝経済再生担当相がNHKの「日曜討論」に出演。高齢化問題に関連した、定年制廃止やシニアの人材活用などに触れ、「日本の65歳は世界一元気」「世界の65歳は日本の76歳!その方たちにどんどん活躍してもらう」と発言したことで、SNS上では《本末転倒!高齢者は年金だけじゃ生活できないから働いてるんだよ、あんたわかって発言しているのか?》《世界中見ても、高齢者が第一線で働かされてるのは日本だけ。いったい何歳まで働かせる気なんだ?》等々、批判の声が続出。さらには、高齢者にとって年金支給開始年齢引き上げが、悩ましい問題となっている最中でのお気楽発言に、《国は年金払うつもりあるのか!》《死ぬまで働かせる気か!》といった怒りの声が大爆発する騒ぎになった。全国紙記者が説明する。

「新藤さんのロジックは、日本人の健康寿命は世界一。世界中の76歳の疾病、健康状態が日本の65歳。だから、『世界で一番元気』な65歳以上の日本人にはどんどん働いてもらい。企業もどんどん定年制を廃止してもらいたい、というものなんですが、現状、大半が年金だけでは生活が出来ないため、働いているケースが圧倒的です。それを、ノー天気に『健康だから』と強調したわけですからね。まあ、庶民との温度差が如実に現れたということでしょうね」

 総務省が発表した「労働力調査 2022年平均」によれば、「60~64歳」の就業率は73.0%で、「65~69歳」は50.8%。さらに上がって「70~74歳」では33.5%、「75歳以上」でも11%が就業しているとのデータもある。さらに、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度の厚生年金受給者の平均年金受給額は、国民年金と合わせて月14万4982円。ただ、この金額には当然ばらつきがあり、国民年金だけの人は、受け取る額も、ぐっと少なくなる。

「ある程度年金をベースに生活していける高齢者たちは、仕事を辞めて貯蓄を取り崩す年金生活に入ることができますが、日々の生活に追われる人々は、仕事を続けざるを得ない。にも拘わらず、今度はさらに年金支給開始年齢を引き上げようというんですからね。健康寿命が延びたからとはいえ、世界中を見渡しても、高齢者がここまで第一線で働かされているのは、間違いなく日本だけ。そう考えると、今の高齢者にはたして『老後』というものがあるのかどうか。死ぬまで働かせて税金を取るのか!といった批判が出て当然かもしれませんね」(前出・全国紙記者)

 むろん健康であれば、定年を迎えたとしても、働くことは悪いことではない。むしろ、社会との接点を持つため、やるべきだとも思う。ただし、自分の意思で働くことと、国によって働かされるのとでは、金銭的かつ精神衛生上、雲泥の差があるはずだ。国は、2021年4月に高年齢者雇用安定法を施行。現状義務化されている65歳までの雇用確保に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するための高年齢者就業確保措置を企業の努力義務と定めた。つまり、何が何でも70歳までは働かせたい、それが国策なのである。悲しいかな、かつて言われた、「安定した老後」などという言葉は、令和の今には存在しないのかもしれない。

(灯倫太郎)

※写真は自民党公式サイトより

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