岸田総理は安倍派一掃で絶好のチャンス/池上彰がズバリ解説

ーー日本国内では自民党の政治資金パーティーのキックバック問題で大騒ぎになっていますが。

池上 岸田総理にしてみれば、安倍派を一掃できるわけですから、絶好のチャンスでしょうね。例えば、逮捕までいかずとも略式起訴をして、罰金100万円という形で処理する可能性はあるわけです。すると過去の例で言うと、3年間から5年間の公民権停止。つまりこれから3年間は安倍派の幹部が選挙に出られず、国会から追放できるというわけですよ。もちろんその反面、岸田内閣の支持率は落ちるし、自民党全体の支持率も落ちます。でも、安倍派が力を失えば、やりたいようにできるわけです。

ーー諸刃の剣ですね。今後さらに内閣支持率は下がりそうです。

池上 はい、何しろ増税メガネですからね。元総理大臣の竹下登が政権を放り出す直前の支持率は5%ぐらいになりました。その時は消費税並みの支持率になったと言われました。

ーー暗い話ばかりで、年始に明るい話題はないでしょうか?

池上 それはドジャースの大谷翔平選手でしょう。10年で1000億円を超える契約は明るいニュースです。しかも毎年3億円の分割でいいわけですから、すごいですよね。

ーーうらやましい限りです。

池上 お金といえば、日銀の植田総裁が、2023年は3%ぐらい給料が上がったので、2024年の春の給料の上がり方を見て、金融緩和をやめるというか、マイナス金利、ゼロ金利をやめる可能性が非常に高くなってきたわけです。昨年の12月19日には「年末から来年にかけて一段とチャレンジングになる」と発言したことでも注目を浴びました。植田総裁にとって「チャレンジング」と言えば、金融緩和をやめるということしかないわけですよ。投資家からすれば金利を上げようとしているとみたわけです。これまで日米の金利差によって、日本が円安になってきたけれど、この発言により「日米の金利差がこれから縮まるんじゃないか」と期待されて、いきなり円高になりました。今後も少しずつ、円安が解消されていくということになると思います。

ーーそうなると、少し景気がよくなりますか?

池上 景気はよくなる可能性がありますし、円安で物価高になっている部分には歯止めがかかる可能性もあります。今、スーパーマーケットに買い物に行くと、あれもこれも値上げでしょ。皆諦めの境地ですよ。今は全般に物の値上げがしやすくなっていますが、連動して社員の給料を上げるという好循環が起きつつあります。これで3月の春闘で大企業の給料が大幅に上がり、中小企業まで行き渡れば、これはかなり明るい話になります。為替も、春先には1ドル=130円くらいまで円高に進む可能性もある。そうなればゴールデンウイークの海外旅行も行きやすくなるかもしれませんよ。

ーー期待したいところです。ちょっとだけ明るい希望が持てました。

池上彰:1950年、長野生まれ。73年NHK入局。94年より「週刊こどもニュース」を担当。05年に退局後は、フリージャーナリストとしてテレビ出演・執筆活動を続けるほか、名城大教授など複数大学で学生を指導。

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