当の総理本人は、2月29日に裏金問題に対して行われた政治倫理審査会に出席。呼ばれてもいないのに「みずから出席し、マスコミオープンのもとで説明責任を果たしたい」と鼻息荒く語ったものの、その中身は国会答弁以上に踏み込んだものはなく、ゼロ回答だった。真相究明を期待した国民は肩透かしを食らったが、ジャーナリストの山村明義氏が言う。
「よほど側近や参謀に切れ者がいないのでしょう。現状にほとんど危機感を抱いていない。『政倫審に出れば大丈夫、支持率回復しますよ』とでも吹き込まれたのでしょうか」
イエスマンに囲まれることで鈍感力にますます磨きがかかったようだ。インターネットでの中継も当たり前になった令和の日本では、ただの「出席パフォーマンス」に騙される国民はごく少数であることに、気づけていないのかもしれない。そして、このような無意味な、いやむしろ逆効果のパフォーマンスを続けていれば、今後、自民党が岸田降ろしに向かう可能性が高まってくるという。ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう語る。
「総理大臣の交代は、国民の生活をよりよくするために行うことが大前提ではありますが、実際には内輪の権力闘争です。ここまで安倍元総理の国葬や統一教会問題、LGBT法案、裏金問題と様々なタスクにうまく対処できず支持率を下げ続けてきた岸田総理ですが、一気に首をすげ替えればイメージも悪化し、党としても痛みを伴う改革になる。政権与党である以上、それは国政の混乱にもつながります」
選挙で当落線上にいる中堅、若手議員たちは、自民党の支持率が低いままだと自分の食い扶持を失いかねない。地盤が強固な大物議員にとっても、議席数を減らし政権が維持できなくなれば一大事である。
「ですから岸田降ろしを実行するにしても、できるだけゆっくり、ソフトランディングしたいのが党内の本音です」(鈴木氏)
自民党にとっての最優先事項は現状、ポスト岸田を選ぶことではなく、派閥解消のドタバタを沈静化させ、3月に24年度の予算を可決させることだ。そして、
「4月28日の衆院補欠選挙の結果で、政権の存続を占うことになるでしょう」(鈴木氏)
さらなる長期政権への第一関門は4月に待ち受けている。
(つづく)