「米国が裏切ることはない」ゼレンスキー“懇願”の裏に、揺らぎ始めたウクライナの愛国ムード

 来年2月にはついに2年目に突入することになった、ロシア対ウクライナの戦争。

 米議会で協議されていたウクライナ追加支援の予算案について、議会上院指導部は19日、 民主・共和両党の交渉が継続中であるため、採決を年明けまで延期するとの見解を示した。これを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は「米国がウクライナを裏切ることはないと確信している」と即日反応した。

 戦争勃発後、ウクライナは1年半以上にわたり西側から武器供与と資金援助を受けてきた。これは武器・弾薬に留まらず、政府機能の維持をはじめ医療から教育分野に至る国家の根幹を担う部分までが、西側からの送金により支えられている。

「2022年の戦争以降、前年比マイナス29.1%と落ち込んでいたウクライナの実質GDPは、西側からの財政支援により2023年には同4.5%増と急回復しています。ウクライナ政府は来年の予算を組んでいますが、これは海外からの送金を見込んで織り込んだもの。支援がなくなれば歳出の半分を占める国防費はもちろん、国の機能じたいが破綻してしまう可能性もある。ゼレンスキー大統領としては、何がなんでも支援を継続してもらわなければならないのです」(同)

 そこで、支援疲れが深刻化する西側に対しゼレンスキー氏がぶち上げたのが、ウクライナ軍の大量動員計画だ。

「戦争開始から2年の節目を迎える中、軍から兵力を45万から50万人増強したいとの要望が出ているといいます。とはいえ反転攻勢もほとんど結果が出ず、兵士やその家族からも批判が相次ぐ中、はたして新たに兵士を50万人も動員できるのかどうか。ゼレンスキー氏としては、ウクライナ国民が一丸となり必死に闘っているという姿を西側諸国にアピールすることで支援継続に結び付けたいという思惑があるのかもしれませんが、戦争長期化による心身の疲弊で、愛国心が揺らいでいる国民も多いと言いますからね。前途多難であることは間違いない」(同)

 一方、ロシアのプーチン大統領は14日、61万7000人が特別軍事作戦に参加していると明かし、来年も作戦を継続しすべての目標を達成する、と自信をみなぎらせた。長引く消耗戦で、1人ひとりの人命がますます軽んじられている。

(灯倫太郎)

*画像はゼレンスキー大統領のFacebookより

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