体育会系的な上下関係がパワハラに発展するのは、何もスポーツ界に限った話ではない。華やかな芸能の世界でも、痛ましい悲劇が引き起こされているのだ。
「9月30日に宝塚歌劇団の入団7年目の宙組団員が、自宅マンションから転落して死亡している。8月31日から1カ月間で月277時間という時間外労働と、上級生によるパワハラを苦にした自殺と見られている。ところが宝塚側は、過重労働を認めながらもパワハラは否定。メディアで報じられた上級生からヘアアイロンを額に当てられた件や『うそつき野郎』『マインドが足りない』などと複数の上級生から罵倒された件について、それぞれ『日常的にあること』『指導の範疇』として、パワハラを認定していない」(芸能関係者)
どこか浮世離れした宝塚の認識について、日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要氏が解説する。
「ファンの間でも知られる厳しい上下関係は、養成学校時代から美しい舞台を作り上げるための『伝統』とされてきました。しかし、それを盾に半ば正当化されてきたことこそがパワハラなのかもしれません。指導や競争の中で、優秀な同僚や後輩に抜かれまいと嫌がらせなどをして妨害することも容易に想像ができます。閉鎖的なコミュニティーに長く身を置いていれば、それだけハラスメントの感覚も麻痺してしまうもの。そんな特殊事情を調査委員会も汲んでいる印象です」
同様に、旧態依然の組織が機能不全を起こしているのが日本大学である。アメリカンフットボール部の薬物事件の渦中に、パワハラ問題までが急浮上した。
「11月27日に澤田康広副学長が林真理子理事長(69)を相手に1000万円の損害賠償を求める訴訟を起こした。8月22日~9月7日にかけて合理的な理由なしに理事会などの主要な会議への出席を禁止され、薬物事件の報道対応を巡って執拗に辞任を迫られたという内容です。いずれもパワハラとして訴えている」(全国紙社会部記者)
11月22日、日大の臨時理事会で林理事長に報酬50%減、澤田副学長に即時辞任、酒井健夫学長に年度末での辞任が勧告された。
「とりわけ、7月6日にアメフト部の寮で大麻を見つけていながら18日まで警察に報告しなかった澤田副学長に厳罰が処された。この『空白の12日間』が日大の信用を失墜させたという理由です。とはいえ、学内には林理事長の力不足を指摘する声も少なくない。結局は、親交のある安倍晋三元総理と妻の昭恵さんの後ろ盾があって理事長に担ぎ上げられた作家にすぎない。キャパオーバーで実務が追いついていないと聞きます」(社会部記者)
余裕のなさは、私生活でも垣間見られていた。都内飲食店経営者が明かす。
「林さんのホステスいじめは有名な話です。大麻事件発覚後の夏頃、銀座のとある店にサイバーエージェントの藤田晋社長と飲みに来た時もやらかしたといいます。女の子が藤田社長と連絡先を交換したらしいのですが、一度退店してから数時間して林さん1人だけが戻ってきた。『飲み屋の女が、なんで連絡先を聞いているのよ!』と怒り狂っていたそうです。その勢いに気圧されて、女の子は連絡先を削除。林さんの常連の店だっただけに居づらくなったのか、程なくして退店してしまった」
パワハラとは別に、カスタマーハラスメントで訴えられないことを祈りたい。
(つづく)
*「週刊アサヒ芸能」12月14日号掲