アジアプロ野球チャンピオンシップ2023で新生・井端ジャパンが全勝優勝を飾った。キーマンとなったのは、要所で活躍した巨人・門脇誠。来季から背番号も35から5に昇格となるが、そのサクセスストーリーを裏付けるようなエピソードが聞こえてきた。
「最近の若手のなかで、コーチと会話ができるのは門脇だけ」
ある球団関係者がこう語るのだが、その意味は「自分を持っている」ということ。20代後半の選手たちも含めてだが、通常、打撃成績を落としてきたとき、コーチに何か話し掛けられても、「ハイ」としか答えられないものだ。しかし、門脇は、「そうなんですよね。テイクバックのときに…」と自身の課題を口にし、かつ具体的な質問も返してくるという。まるで、プロで10年以上もメシを食っているような言動に、巨人コーチ陣は「並みの新人ではない」と感心しつつも驚いていたそうだ。
「シーズン中盤までは、プロ投手の投げるボールに力負けしていたので、右方向に引っ張るスイングを意識していました。後半以降は大学時代の打撃フォームに戻しています」(前出・関係者)
門脇は右方向を意識した急ごしらえのフォームの長所、短所を的確に述べ、コーチ陣と話し合った上で、大学時代のスイングに戻した。全く同じというわけではないが、学生時代に「自分に適したスイング」を見つけていたので、他選手よりも「突っ込んだ打撃論」ができたのだ。阿部慎之助監督が坂本勇人、岡本和真といっしょに、来季のレギュラーとして門脇の名前を出したのも、このように「自分」を持っていたからだろう。
「侍ジャパンの井端弘和監督が強化合宿中の守備練習で付きっ切りになったのは、門脇と広島の小園海斗でした」(スポーツ紙記者)
二遊間にはその門脇と小園、センターには中日・岡林勇希、捕手は広島・坂倉将吾。向こう5年はやってくれそうなセンターラインが出来上がった。
「一方で、巨人はセンターラインができていません。巨人は外野手が弱点でもあり、誰がセンターを守るのか、まだ見えていないのです。ルーキーの佐々木俊輔がいきなり獲る可能性が伝えられているほどです」(前出・関係者)
ただし、佐々木が門脇のように「自分」を持っているかは不明だ。大抜擢もいいが、門脇のような新人は滅多に現れないと思ったほうが、センターラインでヤケドをせずに済むと思うが…。
(飯山満/スポーツライター)