SNSや公営テレビ通販でも偽物販売!韓国が「偽ブランド天国になっている」

 80~90年代にかけては、「コピー天国」の代名詞として韓国の名前が上がったものだった。だが、相次ぐ摘発や規制の強化、さらには国民の「もう偽物はいらない」という意識変化により、昨今の「偽物商品市場」は、すっかり中国に移行した感があった。

 ところが、そんな韓国内で、今度はネット通販によるブランド品の偽物販売が横行し始めたという。このほど、公共機関である「公営ホームショッピング」で数百件の偽造商品販売が摘発され、国内外に大きな衝撃を与えた。韓国在住のジャーナリストが解説する。

「公営ホームショッピングは、韓国の行政機関『中小ベンチャー企業部』により、中小企業製品と農畜水産物の販促支援を目的として2015年に設立されました。公共機関であるため、出店する会社は、それ相応のチェックを受けなければなりません。ところが、このサイトを通じて商品を購入した消費者から、『偽物ではないのか』との指摘が急増したのです。調査の結果、プラダやグッチ、モンクレール、エルメスなどブランドバッグのほか、クロックス、ナイキなど有名ブランド靴の偽物が堂々と販売されていたことが発覚したのです」

 ホームショッピングが外部業者にモニタリングを依頼したところ、昨年5~8月だけで、偽造の疑いがある商品が200件以上も発見された。内訳は、靴152件、バッグ31件、アクセサリー14件、宝石2件、貴金属1件。その後の調査でも、昨年5月から今年7月までの偽造商品摘発件数は419件に上ることがわかったという。

 ホームショッピングでは現在、発覚した出店業者に対し、販売中止措置と払い戻し措置を行っているというが、この問題を追及する議員の間からは「悪質業者は逮捕立件するなど、被害防止のための積極的保護措置が必要だ」との強い声も上がっている。

 実は、今年初めには、仁川の税関が偽ブランド品の密輸入を集中的に取り締まった結果、バッグなど偽ブランド品6万5000点(正規商品価格で2510億ウォン=約279億円相当)をコンテナで国内に持ち込もうとした密輸業者が摘発され、大きなニュースとなっていた。

「現在、韓国での偽物取引の大半はSNSを使った取引で、その中で最も多く利用されているのがインスタグラムなんです。韓国知識財産保護院などの資料によると、2021~2023年8月までの直近3年におけるオープンマーケットでの偽造商品流通摘発件数は49万1285件にも上っています。中でもインスタグラムが22万8740件と圧倒的に多い。ところが、摘発されても今回の公営ホームショッピング同様、その大部分が削除や販売中止措置にとどまり、実効性のある制裁がなされていないのです。つまり、実態に法律がまったく追いついていない。そこが最大の問題と言われています」(前出・ジャーナリスト)

 加えて、最近では有名人の名前や顔写真を違法に掲載する偽広告も急増している。なんと、尹錫悦大統領の写真を使った広告もSNS上にアップされるなど、やりたい放題の状況なのだ。当局もようやく重い腰を上げたとの報道もあるが、この手のサイトは海外に拠点を置く詐欺組織が関わっている可能性も指摘されることから、捜査の難航は想像に難くない。

 いたちごっこは、当分続きそうなのである。

(灯倫太郎)

ライフ