今年8月、福島第一原発からの処理水の海洋放出に激しく抗議し、日本からの海産物の全面輸入停止措置に踏み切った中国。現地メディアは日本を糾弾する報道を繰り返し、直接関係のない日本の企業や個人宛に中国人からの「抗議電話」が殺到するという事態も起きている。
そんな中、同時期に開催されたバスケW杯では、男子日本代表が格上のフィンランドやベネズエラに大逆転勝利し、3勝2敗の好成績で24年パリ五輪の出場権を獲得した。そして、この快挙を中国のスポーツメディア「捜狐」が、「日本は国際舞台で納得いくパフォーマンスを見せられるまでに成長した」と称賛したのだ。
さらに9月には、サッカー親善試合で日本がドイツに4-1と、昨年のカタールW杯を上回るスコアで圧勝した。続くトルコとの一戦でも4-2と快勝すると、中国のスポーツメディア「騰迅体育」が、「日本のW杯はもはや妄想ではなくなった!」と大絶賛したのである。加えてネット上でも、《日本はアジアの誇り》などという言葉が飛び交っており、処理水問題とはまったく正反対の反応を見せている。中国在住ライターが解説する。
「中国メディアが処理水放出を批判するのは、当局の意向によるもの。つまり、政治的な思惑がその背景にあるのです。一方、スポーツに関してはそうした縛りがありません。そもそもバスケットは4月に中国本土で公開された映画『スラムダンク』が大ヒットし、サッカーも日本人選手がプレーするイングランド・プレミアリーグやリーガ・エスパニョーラなど欧州主要リーグは自国リーグよりも人気なのです」
日本のスポーツやアニメ、ゲームなどのカルチャーに対する中国人の思いは、政治的思惑とは別物のようだ。
「むしろ好感を抱いている中国人は非常に多いんです。ただし、スポーツニュースがある程度自由に報じることができるのはあくまで現時点の話。今後、政治のように政府からの圧力がかからないという保障はありません」(前出・ライター)
日中関係がさらに悪化し、スポーツや文化的ニュースでも批判ばかり、などということにならなければいいが…。