かつて「総理になったらやりたいことは人事」とのたまった岸田総理。調整能力に自信を持ってのことだろうが、第2次閣僚と党役員の顔ぶれを見るに、それは勘違いにすぎなかった。支持率アップの最終兵器として女性政治家6人を抜擢したが、実際には暴発寸前の火薬娘ばかりなのだ。
「あの時に起こったことは、私がこれから政治家として歩みを進めていく中で、心に反省を持ち、決して忘れることのない傷として、その歩みを進めてまいりたいと思います」
2014年に発覚した政治資金規正法違反をめぐる「ドリル事件」を振り返り、目に涙を浮かべながら出直しの就任会見を行った自民党・小渕優子選挙対策委員長(49)。内輪では新人事の目玉とハシャいでいるが、要職復帰に際して説明責任を果たしていない、という声が広がっている。
「小渕委員長は、00年に亡くなった父・恵三元総理の側近である青木幹雄元官房長官(今年6月死去)が可愛がり、『ドリル事件』後も森喜朗氏(86)や古賀誠氏(83)らのキングメーカー、そして岸田文雄総理(66)にもことあるごとに『何とか小渕を』と訴えてきた。ですが、大臣経験はあるものの期間が短く、政治家としての能力は未知数。ある意味、今回の再登用は、実力より永田町の『情』による部分が大きい」(政治部記者)
いわばコネ抜擢とも言うべき人事なわけだ。ジャーナリストの鈴木哲夫氏はこう説明する。
「再び入閣を、とならなかったのは、大臣になれば国会で事件のことを根掘り葉掘り聞かれることになるからでしょう。党四役なら、野党や記者からの疑惑追及の機会をかわせますからね」
これに対し、ある自民党関係者は、小渕氏の起用は「茂木対策」だったと耳打ちする。
「実は岸田総理は、党内を引っかき回す茂木敏充幹事長(67)の後任に小渕を据えたかった。が、茂木に拒否され、結局、来年の総裁選に出馬しないことを条件に続投を飲んだんだ。自民党内には党四役は総裁選に出ない、という不文律があるからな。とはいえ、裏切り出馬の可能性もありえる。だから同じ派閥だが、茂木を忌み嫌う青木さんの寵愛を受けた小渕を、同じ四役で並ばせ、互いに牽制し合う構図を作ったわけだ」
元総理が父という政界サラブレッド、加えて国民が活躍を期待する女性政治家、というジェンダー力でのし上がった小渕選対委員長。しかし岸田総理が期待するように、単なる「女性起用」で支持率が上がるほど国民も浅はかではない。
「むしろ党内では、何の苦労もなく成り上がった小渕の『コネ人生』に注目が集まるのを恐れる向きもある。TBSへのコネ入社は有名な話だが、実は、中高大一貫のエスカレーター校にも面接だけの顔パスだったと言われているよ」(自民党関係者)
いきなり選対委員長の重責を担い、出航したばかりの岸田丸の船底にドリルで大穴を開けなければいいのだが‥‥。