民間人への残虐行為も! ワグネルに代わる「プーチン私兵」のヤバすぎる実態

 プリゴジンの乱により、ウクライナにおける主力部隊であるワグネルを失ったプーチン大統領。ワグネルのバフムト撤退を受け、にわかにその存在感を高めているのが、チェチェン共和国のカディロフ首長と彼が率いる私兵「カディロフツィ」だという。

 彼らはワグネル同様、これまでプーチン政権の汚れ仕事を担ってきたとされるが、

「チェチェン共和国では冷戦終結後の90年代、ロシア連邦からの分離独立を求め内戦が勃発。その際、プーチン大統領は分離独立派を鎮圧し、一方でチェチェン人協力者を支援したのですが、その頭目がカディロフが率いる勢力でした。ゆえに彼らはプーチン体制に対する忠誠心が強く、その見返りにチェチェンの実権を掌握するようになった。なので、公式的にはロシア国家親衛隊の一部に組み込まれているものの、実態は完全にプーチンの私兵といってもいい部隊です」(ロシア情勢に詳しいジャーナリスト)

 同時に、彼らは反対派を取り締まる政治警察という位置づけでもあるため、抵抗勢力であると見れば、民間人であっても容赦なく誘拐、暴行、レイプ、暗殺をおこなってきたという。ドイツの人権団体の調査によれば、チェチェンにおける人権侵害の75%が、このカディロフツィによるものとの分析結果もあるというから驚くばかりだ。

 残虐さはワグネル以上ともいわれる、このヤバい部隊が前線に投入されれば、これまで以上の無秩序な戦闘が繰り返されることが想像できるが、実は西側の専門家の見方は少々異なっている。

「というのも、これまでにもキーウ近郊での戦闘にチェチェン人部隊は参加していたのです。しかし、彼らに与えられていたのは、前線に立つロシア軍将兵の後方で、投降や敵前逃亡しないように見張る『督戦』という任務。スターリン時代のソ連軍にもあった逃亡兵を監視する恐ろしい役割ですが、一方、カディロフツィたちが行っていたのは最前線から20kmも後方にいて、主に宣伝用の戦闘動画を撮るだけとも言われ、ウクライナメディアは彼らのことを『TikTok兵』と揶揄していたのです」(同)

 つまり、戦闘力のないカディロフツィがワグネルに取って代わる存在になることはありえない、とみているのだ。

 そんな状況を象徴するような動画が拡散されたのは先週のこと。動画には、ウクライナで戦っているカディロフツィと思われる兵士が、携行式ロケット弾(RPG)を使用時に、不注意のため後方噴射が仲間兵士を直撃、叫び声を上げて倒れ込む様子が映し出されている。

「動画が撮影された日時や場所は不明ですが、カディロフ自身、チェチェン兵がバフムトなどの激戦地に配備されているとコメントしていることから、この兵士がカディロフツィである可能性は高いでしょう。となれば、今後はこうした初歩的ミスを犯すヤバい兵士がロシア正規軍に交じって戦闘に加わることになり、前線の正規軍兵士は戦々恐々かもしれませんね」(同)

 一方で、カディロフツィが前線に出れば、ウクライナの民間人が標的にされるとの恐怖もある。ワグネル撤退でいよいよ混迷を極めるロシア軍の行方はどうなるのか。

(灯倫太郎)

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