北朝鮮のミサイルによる脅威がそこまで迫ってきている今、我々日本人も最悪のケースを想定し、事前訓練を行うべき時期に差し掛かっているのかもしれない。
4月13日朝7時過ぎ、北朝鮮が内陸部から大陸間弾道ミサイル級の可能性があるミサイルを発射。防衛省からの情報を受け、政府は午前7時56分、エムネット(緊急情報ネットワークシステム)で「先ほど発射されたミサイルが午前8時ごろ、北海道周辺に落下するものとみられます。北海道においては直ちに建物の中や地下に避難して下さい」と伝えた。
「北朝鮮による弾道ミサイル発射で、政府がエムネットとJアラート(全国瞬時警報システム)で情報を発信するのは今回で7回目。ただ、日本の領土や領海への落下予測が発信されたのは今回が初めてとあって、北海道はじめ周辺地域の自治体及び関係各所に大きな緊張が走りました」(全国紙記者)
現状、日本におけるミサイル防衛は、早期警戒衛星やレーダー等で弾道ミサイル発射を探知、日本に落下すると判断すれば、海上自衛隊のイージス艦から海上配備型迎撃ミサイルと、航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオットミサイルを発射して撃ち落とす、という二段構えをとっている。
「幸い、これまでに迎撃が実行された例はないものの、自衛衛隊法82条では、弾道ミサイルなどが日本領域に落下する恐れがある場合、『首相の承認を得て防衛相が自衛隊部隊に対し破壊措置を命じることができる』と定め、16年以降は、常に命令の実行が可能な『常時発令』状態になっています。つまり、今回のケースでは戦後初、自衛隊法に基づく破壊措置の実施(迎撃ミサイル発射)の可能性があったということです」(同)
ところが、突然、このミサイルがレーダーから消えたというのだ。防衛省は、レーダー消失の原因を、ミサイルの高度が高くなりすぎたため軌道を正確に捕捉できず見失ったと説明しているが、
「今回のケースは結果的に日本領域に落下せず、直前の判断で迎撃は見送られましたが、北朝鮮の朝鮮中央通信は14日、今回発射したのは固体燃料エンジンの新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星18』だとして、3段式の1、2段部分は日本海に落下したと報じています。固形燃料は注入に時間を要す液体燃料と違い、すぐに燃料充填出来るため、発射探知までのハードルも格段に上がってしまいます。さらに近年の北朝鮮は、移動式発射台や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)実験も行っているため、それが可能になれば迎撃難度も増す。つまり、今回のレーダー消失はそんな中で起こった出来事で、結果、日本のミサイル防衛システムの課題が露呈してしまったことは否めません」(同)
浜田靖一防衛相は14日の記者会見で「常に(ミサイルを)レーダーで追っている。迎撃態勢を常に取っている」と、日本のミサイル防衛態勢は万全だと強調したが、一方専門家の中には「新型固体燃料ICBMは、北朝鮮の弾道ミサイル開発の画期的進展の証」という声もある。
一触即発——いよいよ、そんな言葉が現実味を帯びてきている。
(灯倫太郎)