2月のトルコ・シリア地震は、内陸型としては世界で過去最高規模とも言われ、5万人以上の犠牲者を出した。我が国では、それ以上の被害を生むと言われる南海トラフ巨大地震発生が危惧されている。そうした中、大地震に影響しかねないかねないという、北朝鮮の最新核兵器情報が届いた。真相を追った。
3月24日、北朝鮮の「朝鮮中央通信」が報じた、最新の軍事ニュースが世界に衝撃を与えている。
そのニュースとは、新型の水中攻撃型兵器システムが開発され、試験発射を金正恩総書記(39)が指導した、というものだ。詳しい報道内容はこうだ。
〈新型兵器「核無人水中攻撃艇・ヘイル」は水中爆発による放射能津波で、敵の艦隊と港を破壊消滅させる〉
言うなれば、核魚雷を搭載した無人の水中ドローンのようなもので、「ヘイル」とは朝鮮語でそのまま「津波」を示す言葉だという。
同通信によれば、21日に北朝鮮北東部の咸鏡南道(ハムギョンナムド)から日本海方面に向けて投入されたヘイルは、水深80〜150メートルを楕円や8の字の形に進み約59時間潜航。23日午後に目標地点に達し、試験用の弾頭部を水中爆発させたという。また、実際に核を搭載した場合の威力の大きさについては、「韓国の港付近で爆発させることで約50メートルの津波を起こし、停泊している米空母に直撃させる」としている。爆発そのものによる破壊よりも、放射能を含んだ津波被害で敵に大打撃を与える新兵器として喧伝。さらには4月4日から7日まで再び核実験を成功させたと強調しているのだ。政府防災関係者が嘆息して語る。
「今回の実験に関して、当然ながら核が使用されたわけではないし、3月13日から、春の軍事演習としては5年ぶりとなる、朝鮮有事を想定した大規模合同野外訓練を行ったアメリカと韓国を牽制するための発表だったことも間違いない。だが、隣国の日本も当然、北朝鮮の核の射程内に存在する以上、新兵器には警戒を強めずにはいられない。それに津波ばかりを強調しているが、地震発生回数が中国、インドネシア、イランに次いで世界4位のわが日本にとっては、北朝鮮が起こす水中での核爆発が、発生間近と言われる南海トラフ巨大地震を引き起こす要因となりうることまで気を回す必要がある」
大地震と大津波という2つの自然災害が同時発生する恐ろしさは、日本人なら誰もが記憶に焼き付いている。仮に北朝鮮の核攻撃が連鎖的にそれらを招くのであれば、その脅威は筆舌に尽くしがたい。
内閣府が発表した被害想定によれば、マグニチュード9.0の南海トラフ巨大地震で被害が最大となるケースでは、死者・行方不明者が30都府県で約32万3000人だという。そのうち津波による被害は約7割とも想定されている。
また、建物被害も全損・全焼棟数合計が238万6000棟と途方もない規模で、これらは11年の東日本大震災の約17〜18倍にもなるのだ。先の政府防災関係者がさらに続ける。
「南海トラフ地震は2035年を軸に『プラスマイナス5年』で発生するという説もあるし、この先30年での発生率が70%以上あるとも言われる。そんな不安定な地殻に、核爆発という不自然かつ人工的なストレスを加えることで想定外に早く大地震が起きたとしたら‥‥。もっと言えば、津波と南海トラフのあとに万が一、首都直下型地震や富士山の噴火といった第3、第4の大災害が誘発されれば、人的、物的両面で未曾有の惨事を招きかねない。対策を練る側からすれば『知らなかった』では済まされないだけに、今回の北朝鮮の発表内容は、非常に頭の痛い厄介な問題だ」
北朝鮮が開発した新型核兵器は、地震被害リスクが極めて高い我が国にとって、最大級の脅威となってしまうのだろうか─。
(つづく)