戦後最長に及んだ政権を振り返った「安倍晋三回顧録」が大きな波紋を広げる中、今度は参院選の遊説中に斃れた元総理の銃撃事件を元にした小説が出版される。しかも、作者は外事課の元警察官で警察庁にも勤務していた。独自の情報源により掘り起こした新事実により、葬り去られた事件の闇が今浮き彫りになる。
「銃撃事件の直後、世の中は容疑者の背景にあった旧統一教会の話題で一色になってしまった。しかし、本当に新聞・テレビで報じられることだけが真実なのか。これだけの重大事件にもかかわらず、あまりに多くの事実が見過ごされている」
こう疑問を呈すのは、「小説・日本の長い一日」(アートネクスト)の著者・本郷矢吹氏。極東アジアを専門とする元警察庁外事課勤務という利点を生かし、事件に埋もれた新事実を収集し、本作の執筆に至ったという。なお、現在も情報収集活動を続けるため覆面作家として活動している。
物語は、選挙応援演説中に元総理が凶弾に倒れる場面から始まる。発砲から間もなく現場で逮捕された容疑者は元自衛官、その背後には政界にも巣食うカルト宗教の存在があり‥‥。まさに実際の事件を照射したかのようなストーリーが展開される。そして、別件で容疑者の情報を防衛省から極秘裏で照会を受けていた警察庁外事課長が巻き込まれていく──。事件の直後、地元県警、病院、内閣情報調査室などの組織や関係者がどのように動いていたのか、が現実さながらに克明に描かれるのだ。
驚くべきは、一報を受けた官邸の総理が、危篤状態の元総理を気遣いつつも、最初に株価と円の暴落を阻止する動きを日銀総裁などに指示することだ。
経済アナリストが当日の為替市場を振り返る。
「実際の事件は金曜日でしたが、午前中に『安倍元総理が銃撃され心肺停止』のニュース速報が流されると前日まで下落が続いていた円相場が一転して円高に転じたのです。為替相場は1ドル=136円台から一時135円台前半に転じた」
現実に大手金融機関が大幅介入し、円を買い支えていたと証言するのだ。
さらに、官邸の動きは経済の動きに敏感だった。万が一の場合には死亡時期の発表を遅らせる指示を厚労相に伝えるのだが、医療ライターがあとを引き取って証言する。
「安倍総理はドクターヘリで奈良県立医大附属病院に0時20分頃に搬送されました。実は救急センター内で40数本の輸血が行われているのですが、1本3分としても2時間半ほど、実際には株式市場が閉まる3時まで容体がもたなかった可能性が高いのです」
凶弾に倒れた夫の一報を受け、渋谷の自宅から新幹線などで駆けつけた昭恵夫人(60)が病院に到着したのは4時55分。その到着を待つかのように死亡時刻は5時3分。死因は失血死と発表されている。
(つづく)