3月16日に行われた日韓首脳会談により、日本が2019年から続けてきた韓国向け輸出規制措置を解除。代わりに韓国も、世界貿易機関(WTO)への提訴を取り下げるなど、最悪とされてきた日韓関係に改善の兆しが見えてきた。
来日した尹錫悦大統領は、3月1日に開催された独立運動記念セレモニーでも、「日本は過去の軍国主義侵略者から我々と普遍的価値を共有し安全保障と経済、地球規模の課題で協力するパートナーになりました」と演説。岸田首相との会談でもその言葉通り、改めて日韓の協力関係を強調し、関係改善を内外に印象付ける形となった。
そんな韓国では今、文在寅前大統領の残党である「左派一掃作戦」がエスカレートしているという。
韓国在住のジャーナリストが説明する。
「尹氏が大統領に就任して、この5月で1年。これまで検察力を総動員して、文政権がもみ消してきた不正を丹念に追及してきたことで、2019年に発覚した亡命漁民強制送還事件では、当時の政権幹部4人を起訴。さらには、西海公務員殺害の真相隠ぺい、月城原発1号機経済性評価改ざん事件等々、多くの事案で文政権を支えた幹部たちが、検察の捜査対象となり、逮捕・起訴されています。こうした半ば強引ともいえる尹氏の手法に対し、親文系一派は『検察のでっち上げ捜査だ』『政治報復だ』と猛反発していますが、大統領の任期が終われば逮捕されるのが珍しくない韓国のこと。今は検察の手がいつ“本丸”である文氏に及ぶかに、国民の関心が注がれていまするようです」
かねがね歴史問題で日本を厳しく批判していた文氏が大統領に就任したのは2017年のこと。以来、日韓関係は戦後最悪となり、19年には日本政府による輸出規制強化に反発した韓国で、日本製品の不買運動や日本への旅行を拒否する「ノージャパン運動」も広まった。
「この時は店頭から日本製品が消え、ファッションブランドを展開するショップの店舗数も激減しました。とはいえ、政権が変わると国民の意識も一変するのが韓国という国の現実。加えて、国民の意識の中にも『反日疲れ』があり、ここ1年は、若者を中心に日本のカルチャーを受け入れる『イエスジャパン現象』が起きていました。そうした背景を受け、尹大統領としては今のうちに文前大統領政権の不正を白日の下に晒し、残党である左派を一掃したいという考えがある。今回の岸田首相との会談にも、そんな決意が含まれているように感じましたね」(同)
ただ韓国の場合、いかに「パートナーシップ」を謳っても、内政問題によって突然、方針を裏返すことは歴史が証明している通りで、その懸念は捨てきれない。
「先の大統領である李明博氏が2012年、支持率低下に歯止めをかけるため、竹島に韓国大統領として初めて上陸したことは記憶に新しい。その意味で、低迷する尹大統領の支持率が今後どうなるのか気になります」(同)
さて、日韓関係改善の兆しの裏で急加速する「文在寅一派」一斉粛清の行方とは。
(灯倫太郎)