ワグネルに対抗!? ウクライナの“激ヤバ”特殊部隊「クラーケン」の正体

 世論の猛反発もあり、囚人をスカウトして戦地へ送ることは辞めたものの、相変わらず前線で残虐な行為を繰り返しているとされるのが、プリゴジン氏率いる民間軍事会社「ワグネル」だ。ところが実はウクライナにも、ワグネルに負けず劣らずの超過激な特殊部隊が存在する。それが「クラーケン」という志願兵による戦闘部隊なのだという。

「ロシアの国営RIAノーボスチ通信によると今月2日、ウクライナの武装したグループが国境を侵犯し、プーチン大統領はこれを『テロ攻撃』と断定しました。実は、この部隊こそ東部ハルキウ州を拠点とする特殊部隊『クラーケン』のメンバーで、5日にも対戦車誘導ミサイルでロシア西部・ブリャンスク州内の監視塔を破壊。さらに11日には、ブリャンスク州とクルスク州にあるロシアの監視塔計2カ所をドローンにより攻撃、破壊したとSNSで発表しています。ウクライナ正規軍ではないものの、ロシア軍及びワグネルにとって大きな脅威になっているようです」(ロシアウォッチャー)

 現地メディアの報道によれば、クラーケンは昨年2月にロシアによるウクライナへの大規模な侵攻がスタートしたその日に、アゾフ連隊の退役軍人らにより結成された部隊で、名称は巨大なイカに似た神話の海の怪物という意味合いがあるという。

「ロシア内務省の発表によれば、クラーケンを指揮するのは、コンスタンティン・ネミチェフとセルゲイ・ヴェリチコという元アゾフ連隊のメンバーで、どちらも極右的思想を持つことから、ロシアでは『特に危険な指名手配犯罪者』として国際指名手配リストに載せているのだとか。クラーケンのメンバーの多くは地元サッカーチーム『FCメタリスト・ハルキウ』の熱狂的サポーターで構成されていますが、米紙ワシントン・ポストの報道によると、その存在はサポーターというよりフーリガンそのもので、サッカー場に集まるのは単なる手段。要は相手サポーターとの乱闘が目的の『用心棒や、ごろつきの集まり』だと伝えています」(同)

 そんな彼らのたまり場だったスポーツバー「ザ・ウォール」が、2014年にロシア軍に破壊されたことで、プーチン政権に対する反発が激化、そこに元アゾフ連隊のメンバーが合流し、過激な戦闘部隊へと変貌を遂げたというわけだ。

「指導者のコンスタンティンは学生時代から右翼政党『国民軍』で政治活動を始め、落選したものの、ハリコフ市長に立候補した経験もあり、地元サッカーファンにも支持される人物。そんなこともあって、部隊への志願者が後を絶たないそうです」(同)

 現在、クラーケンはウクライナ国防省の管轄下にあるとされ、20代から60代まで約1800人の兵士が在籍していると伝えられるものの、正規軍ではないため軍のスポークスマンが正式な人数を公表することはない。ただ、メンバーの中には退役軍人やドンバスの激戦をかいくぐってきた準軍事的戦闘員も多数含まれており、正規軍の大きな力になっていることは間違いないようだ。

 戦争も2年目に入り、まさに「目には目を歯には歯を」の様相を呈してきた。

(灯倫太郎)

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