急展開である。エンゼルスのオーナー、アート・モレノ氏が公式ツイッターで「このまま球団を保有し続ける」と宣言したのだ。NBAウォリアーズのジョー・レイコブオーナーなど、買収に関心を持つ“複数の投資家”が「新エンゼルスオーナー候補」として報じられてきた。昨季後半はこの騒動でエンゼルスナインは試合に集中できず、敗戦を重ねた。選手、ファンも「あの騒動は何だったんだ?」の心境だろう。
「モレノ氏が引き続き、エンゼルスのオーナーを続けるとなれば、ファンの関心は『大谷を引き止められるかどうか』に絞られました。米メディアは悲観的ですが」(在米ライター)
しかし、日本のプロ野球関係者の見方は正反対だった。「大谷残留の可能性はむしろ高まった」と見ていた。
「レイコブオーナーはウォリアーズを強豪チームに変貌させました。でも、その過程で監督やチームスタッフを解任し入れ替えています。大谷はWBC出場を決めた背景に日本ハム時代の栗山英樹監督との関係がありました。お世話になった指導者、スタッフを大切にするタイプです」(NPB関係者)
モレノ氏は売却撤回の理由として、「ファン、選手、そして従業員らと別れる準備ができていないことに気づいた」とも綴っていた。大谷はエンゼルスのチームスタッフと良好な関係にあり、シーズン中に球場内の娯楽室で彼らとビリヤードを楽しむ様子が目撃されている。おカネや出世よりも「お世話になった人を大切にする」のが“日本人気質”だ。
もっとも、恩義や友情とビジネスチャンスを天秤に掛け、前者を選択することは、アメリカでは“バッドチョイス”とされている。残留か移籍かの二択の局面では、大谷の代理人がそうした文化の違いを説明すると思われるが、球団売却の撤回で「何も変わらない」状況は、恩義や友情を大切にする日本人気質に響くのは間違いなさそうだ。
「スプリングトレーニング初日や前半に球団オーナーが現地入りし、選手たちを激励するのが通例です。でも、近年のモレノ氏は姿を見せていません」(前出・在米ライター)
今オフでフリーエージェントとなる大谷の去就は、まさに“オーナー次第”だ。
(飯山満/スポーツライター)