倉庫が梅干しでパンクしている――。老舗の梅干し製造問屋である「梅樹園」が、公式ツイッターに梅干しの消費量が減少している窮状を投稿すると、6万件の「いいね」が寄せられ大きな話題を呼んでいる。なぜ、梅干しは食べられなくなってしまったのだろうか?
「1月10日、梅樹園はツイッターで令和元年から令和3年の年間消費量は1世帯当たり約663gと梅干しが食べられない現状を明らかにし、これを分かりやすく『弊社の梅干し倉庫はパンクしており、梅農家さんが作った梅干しの多くは行き場のない状況』と説明しました。そして、この状態が続くようであれば、梅樹園を含む多くの梅干し屋が廃業せざるを得ないと業界全体が危機にあることを訴えたのです」(週刊誌記者)
総務省の家計調査によると、1世帯当たりの梅干しの消費量は2002年の1053gをピークに減少し続け、21年には658gと約4割も少なくなっている。梅干しの消費量が減ったのは、食の多様化や家族構成の変化、20年に起きた凶作の影響などがあげられるが、最も大きな原因と考えられるのは若者の梅干し離れだ。
「21年の梅干し消費量を年齢別に見ると、70歳以上は834gなのに対して29歳以下は303gと半分以下になっている。なぜここまで若者が梅干しを食べないかというと、『ピータータン』が増えていることが原因と考えられます。ピータータンとは『ピーターパンのような舌』の意味で、幼少期から味覚が変わらないまま大人になることを指します。昔は苦手な食べ物を強制的に食べさせるなんてことが当たり前のように行われていましたが、近年は親も学校も苦手な食べ物を無理やり食べさせるようなことはしなくなったため、いわゆる『大人の味』と言われる酸味や苦味のある食べ物や飲み物を苦手とする若者が急増しているのです。梅樹園さんはツイートがバズって以降、注文が殺到して発送に遅れが出る状況になっているといいますが、梅干しの消費量を上げるためには業界全体で取り組んでいく必要があるでしょう」(フードジャーナリスト)
若者に受け入れられるためには、これまでにないアイデアが必要かもしれない。
(小林洋三)