新潟県村上市の沖合に浮かぶ人口約350人の小さな島「粟島」。漁業や渡り鳥の中継地としても有名で、釣り客や野鳥愛好家などに人気の日本海の離島だが、そんなのどかなこの島が現在、深刻な危機に見舞われている。原因は粟島浦役場の慢性的な職員不足だ。
本来、役場に必要な事務職員は17名。だが、いま現在働いているのは1日付で県から派遣された職員1名を含む13名。さらに、家庭の事情などにより1月末までに3人の職員が退職を予定しているという。
このままだと2月以降は定数のほぼ半数の10名で業務に当たらなければならず、役場としての機能の維持が困難になる。県市町村課の担当者は新聞各紙の取材に対し、「災害級の事態」という言葉を使ってコメント。村も内閣府の「地方創生人材支援制度」を利用して国に職員派遣を申し入れているが、現時点では派遣してもらえるかは不透明だ。
もはや限界集落どころか〝限界自治体〟となりつつあるが、地方行政に詳しい大学教授は、村の現状と今後を次のように分析する。
「過疎高齢化が進んでおり、職員を募集しようにも年配者と未成年者を除く島民の大半は仕事を抱えています。さらに離島なので近隣地域からの応募も期待できません。粟島浦村は平成の大合併でも自主自立の道を選びましたが、今は県からの職員の派遣がなければ村が成り立たない状態。すでに役場として機能不全の状態に陥っていると言えます」
しかも、これは近い将来、過疎の地域ならどこにでも起こりうる話だと警鐘を鳴らす。
「現在、人口1000人未満の自治体は全国に約40町村あり、離島や陸の孤島のような場所ばかり。こうした自治体だと地元出身者以外は採用後5年以内に離職するケースが多いとのデータが出ており、粟島浦村も同様です。職員集めだけでなく、いかに定着させるかも考えていかないといけません」(同)
近いうちに「役場の職員不足」を理由に合併なんてこともありそうだ。