「どうなってるんだい、ティム・クック?」と、アップルCEOに対し、いつものようにツイッターで問いかけたのはあのイーロン・マスク氏だ。アップルがツイッターへの広告を停止したことを受けて、「アメリカでの言論の自由が嫌いなのかな?」とその理由を問うたのだ。
マスク氏はツイッターのCEOになるやいなや、トランプ前大統領やユダヤ人嫌悪の発言を繰り返していたラッパーのカニエ・ウエストのアカウント凍結を解除。海外メディアでは、凍結されていた6万2000個ものアカウントを復活させる「ビッグバン」を実施中などと報道されている。
マスク氏のこうした「言論の自由」を優先させる方針に、既にアメリカ商品大手のゼネラル・ミルズや製薬大手のファイザー、フォルクス・ワーゲンの「アウディ」ブランドが広告の出稿を停止していたが、そこにGAFAのアップルまでが加わったのだ。
「マスクは11月10日にツイッターの社員向け演説で、早期の収益改善を急ぐ必要がある危機感を共有してもらおうと、倒産の可能性があることを述べていましたが、さらにアップルが加わったことで、実際に倒産するかもしれない可能性が出てきました。マスクはさらにアップルがアップストアからツイッターを締め出すといった趣旨のツイートもしているので、そうなったら本当に終わりかもしれません」(経済ジャーナリスト)
マスク氏はCEOになった直後に収益の安定化を図るために、有償の「ツイッターブルー」での「認証バッジ」の配布を始めたものの、カネさえ払えば認証が得られるものだったために提供停止に追い込まれるなど、後手後手ぶりが目立っていた。そもそも「言論の自由」の名の下に、ヘイトで「荒れた」場所に留まる人は多くないだろう。根本の方策が世間から受けが悪いというのだから、先行きはだいぶ暗いといわざるを得ない。
だが世界で3億3300万人のユーザーがいるとされるツイッターは、もはや社会のメディア・インフラと言っていい。実名登録で長文可のフェイスブックとも違うし、画像と動画が中心のインスタやTikTokとも違う。それが迷走、ともすれば消滅の危機にあるとなれば、社会に与える影響は大きい。
だから11月28日にはアメリカ政府さえツイッターの迷走に懸念を示した。
「バイデン政権のジャンピエール大統領報道官がツイッターの迷走に誤情報拡散の温床にならないか『私たちは警戒している』と述べたのです。実際アメリカの報道によれば、ここ最近トランプ陣営の議員が急速にフォロワーを伸ばし、リベラル勢力の議員は減らす傾向にあるといったものもあります。となれば政府だけでなく民主党陣営としても気がかりでしょう」(同)
すると今度は共和党議員が擁護する。ジャンピエール報道官の発言を受けた翌29日、共和党が多数派を握る下院の議長候補であるケビン・マッカーシー議員が記者団に対し、「マスク氏を批判するのは止めるべきだ」と語ったのだ。
マスク氏は共和党支持者として有名で、共和党内でポスト・トランプの第1候補と目される、南フロリダ州のロン・デサンティス知事への支持を表明している。となればツイッター社問題のみでなく、次期大統領選挙の行く末も絡んでくるわけで。
そんな政治問題ともなりつつあるツイッター社問題。はたして今後どうなるものやら。
(猫間滋)