金正恩「本物の娘」登場と金与正の「大バカ発言」…早くも囁かれる権力闘争の行方

「あの大バカが、危険な状況を作り出した。文在寅(前大統領)の時は、少なくともソウルは標的ではなかった。(韓国は)アメリカの忠犬。主人の投げる骨をかじって歩き回る野良犬だ」

 24日、「朝鮮中央通信」通じて公開された談話で、北朝鮮への追加制裁を検討する韓国に対し、毎度おなじみの口調で、痛烈批判を繰り返した北朝鮮の金与正労働党副部長。与正氏発言の裏には、前・現大統領の実名を用いて誹謗中傷、比較することで、韓国国内世論の分裂を誘導する狙いがある、というのが多くの専門家の見方だ。

「今月18日には、金正恩総書記が第2子とされる娘を『火星17型』発射実験の現地指導に同行させ話題になりました。さらに27日付の『労働新聞』でも、正恩氏が公開行事に娘を連れて現れる姿が公開され、『(金総書記が)尊いお子様と共に撮影現場にお出ましになり(中略)、メンバーたちと記念写真をお撮りになった』と1面から3面にわたって報道。18日のミサイル視察の時は『愛するお子様』と表記していたものが、今回は『尊いお子様』という最高の尊称になっている。これは、すなわち正恩氏の後継者候補として一歩抜きん出たということ。そんな中での与正氏による韓国への痛烈批判に様々な憶測が飛んでいるのです」(北朝鮮ウォッチャー)

 というのも、20年に金氏の健康不安説が流れた際、後継者候補として妹与正氏の名前が挙がったのものの、軍の幹部たちからは「言動で総スカンを食らっている」との情報もあり、現体制を維持できるかどうか疑問視する声も多かったとされる。

「正恩氏としても、軍上層部とは上手く付き合いたいが、なにぶん与正氏は軍の中で人気がない。なので、現段階では与正氏をスポークスマンとして、“ゆくゆくはこの娘が私の後継者ですよ”と軍部をはじめ国民にアピールしている可能性も考えられます」(同)

 むろんそれは、金正恩総書記による長期政権が続けば、の話。万が一、正恩氏が不測の事態で亡くなった場合、現段階では与正氏が後継者になる可能性が高いとされる。

「伝えられる限り、現在は与正氏と正恩氏の妻、李雪主氏との関係は良好のようなので、すぐに権力闘争が起きるとは考えづらい。ただし、仮に与正氏が女帝としてこの国を率いることになった場合、彼女にも子供が数人いると言われますからね。そうなれば、両者の子供の間で問題が起こる可能性はなくはない。つまり、この先何が起こるかは誰にもわからないということです」(同)

 正恩氏自身も3男で、長男や次男を差し置いて、8歳だった92年に父の金正日から「お前が私の後継者だ」と名指しされたという。韓国情報院の発表によれば、正恩氏にも3人の子供がおり、その1人が今回公の場に登場している「ジュエ」という次女だと伝えている。

 はたして、娘の公開とエスカレートする与正氏の過激発言に見え隠れするものとは…。

(灯倫太郎)

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