オリックス・吉田正尚「メジャー挑戦」の裏にあった「ヤンキースの台所事情」

〈ジャッジの慰留が最重要事項だが、左打者がもう1人必要だ。日本の吉田が‥‥〉

 米大リーグ・ヤンキースの地元、ニューヨークタイムズが11月10日、ポスティングシステムでメジャーリーグ挑戦を目指すオリックス・吉田正尚について、〈ヤンキース、ジャッジの代役として興味〉の見出しを立てて冒頭のように紹介した。

〈ジャッジの代役〉の見出しは衝撃的だったようで、米国の野球ファンは、「そんなスゴイやつがまだ日本にいたのか?」と大反響だったという。

「ヤンキースは今年4月、アーロン・ジャッジに対し、『7年総額2億1350万ドル』(約304億円)の新契約を提示しましたが、合意には至りませんでした。その後、シーズン62本塁打のア・リーグ新記録を樹立したので、『5000万ドル以上(約73億5000万円)の年俸が必要だ』とも伝えられています」(米国人ライター)

 ジャッジ慰留の可能性は五分五分で、交渉の長期化も予想されている。

 そうなると、交渉の順番が変更され、「まずは吉田を獲得してから」ともなりそうだ。しかし、吉田の米球界挑戦は、日本よりも米メディアのほうが先行している感が否めない。一部メディアによれば、オリックスの福良淳一GMが、吉田自身の口からメジャー挑戦の意思を確認したのは、11月3日。いったん、福良GMが持ち帰り、話し合いを継続していくとされていたが、前述のニューヨークタイムズのように、米メディアは「吉田の挑戦」を既定路線のように捉えている。

「日本シリーズが終了した翌日、吉田の米球界志望が報じられました。かねてよりその気持ちを秘めていたのかもしれませんが、少なくとも、昨年の契約更改の席では出ていなかったと思います」(在阪記者)

 以前から吉田の気持ちを知っていたのなら、福良GMも直接確認することはしなかっただろう。もっとも、「オリックスは選手のメジャー志望に理解がある」とも言われている。「最終的には認める」との見方も強いが、

「少し時間がかかると思います。国内FA市場で西武・森友哉、日本ハム・近藤健介の獲得が決まればともかく、そうでなければ、吉田が抜けた分がそのまま戦力ダウンとなりますからね」(球界関係者)

 ポスティングシステムは日本時間の12月15日までに申請すれば、MLB機構から米30球団に契約可能選手として通知される。申請がギリギリとなるかどうかは国内FA市場次第となりそうだ。吉田のメジャーでの活躍はファンならずとも興味の尽きないところだが、日米の思惑もあり、すんなりと決まるかどうかはまだ未知数のようだ。

(スポーツライター・飯山満)

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