すったもんだの末、結局は当初の目論み通りにツイッター社の買収を果たしたイーロン・マスク氏。買収金額は440億ドル(約6.4兆円)で、4月4日にマスク氏が同社の9.2%の株式を取得していたことが発覚してから約6カ月後に成立した超大型買収劇だった。
「マスク氏がさっそく行ったのは、パラグ・アグラワルCEOら幹部4人を解雇したこと、ツイッターでの自身のプロフィールを『Chief Twit』としたこと、そしてツイッター社を訪れる時に手にしていた洗面台を設置したことでした。今後は、マスク氏が明かしてきたように、アルゴリズムの公開や、憎悪や分断の連鎖の防止、検閲の制限、スパムボット対策などに手をつけることになるでしょう。7500人の社員の雇用については、今後、具体的な話し合いが行われるはずです」(経済ジャーナリスト)
ツイッター社については大きな改革が行われそうだが、肝心の「ツイッター」にはどんな変化が訪れるのか。実は、マスク氏の買収劇が始まる前から、ツイッターの「スーパーアプリ化」に注目が集まっていたのだという。
スーパーアプリとは、様々なアプリの機能を1つのアプリに集約したものだ。例えばLINE。LINEにはメッセージアプリという機能の他、決済やショッピング、ゲームといった複数の機能が搭載されている。そしてマスク氏は、送金からショッピング、車の送迎サービスなどを提供するスーパーアプリを作るための基盤としてツイッターを再開発する考えを明かしている。
「スーパーアプリは中国のウィーチャットやアリペイ、インドのPaytm、インドネシアのGoJekなどが知られます。東アジアの国で普及が進んだのは、これらの国がITで後発だったからです。先進国ではまずパソコンがあって、その後、スマホやタブレットに端末が移行する中でアプリが開発された経緯があるので、それぞれのサービスが乱立しています。ところが後発国では既に開発されたビジネスモデルが取り込まれる形でアプリが進化したので、スーパーアプリ化が容易だったのです」(ITジャーナリスト)
「IT先進国」のアメリカでは、やはりアプリの機能が分散化している例が少なくない。そんな事情からツイッターのスーパーアプリ化が期待されるわけだ。
マスク氏が今後ツイッターをどう変えていくのか、その結果、ユーザーの生活がどう変化するのか、要注目なのである。
(猫間滋)